外科医6名を含む約80人のチームによる念願の手術を受けた。
チームを率いたサミア・マルディニ医師(Dr. Samir Mardini)らは、デジタルを駆使して入念な手術計画を立て、約9か月間、3Dプリントを使ったガイドによるシミュレーションを何度も続けてきた。実際の手術では、約2日半にあたる50時間以上をかけ、ドナー組織から額や上下のまぶた、鼻、口、上顎と下顎(歯を含む)、首の皮膚や筋肉、神経を移植し、顔全体の85%を再形成した。なお、この複雑な手術では、デレクさんとドナーの顔面神経を適切に接続するため細心の注意が払われた。その結果、食事、まばたき、さらには笑顔などの機能が回復した。
デレクさんはその手術から1か月後、初めて自分の顔を鏡で見ることが叶い、その後も見栄えをよくしたり、舌とまぶたの機能を改善したり、神経がうまくつながっているかどうかを確認するための手術を受けてきた。そして自身の経験から胸のうちを次のように明かした。
「あの日、私は亡くなっていたはずだった。でも今、こうして生きていることに感謝している。なぜなら、自分が生きているのには理由があるからだ。私は自分の経験を多くの人と共有し、自殺を予防するために声を上げていきたい。」
「この手術は私の人生を変え、以前より自信が持てるようになった。だからいつか誰かと巡り合い、落ち着いて、家庭を持ちたいと思っている。そしてできるだけ多くの人を救うため、自分のストーリーをシェアし続けるよ。」
一方、マルディニ医師は手術後、顔面移植について「非常に複雑であり、我々の目的は患者が失った機能を取り戻すことだ。これは審美的な手術ではない」と強調した。そして、「手術は外見の改善につながり、患者にとって非常に大きな意義がある」と述べ、次のように続けた。
「臓器移植のほとんどは命を救うものだが、顔面移植は“人生を与える”手術だ。顔面移植をしなくても生きていくことはできる。しかし、顔面移植を受けなければ、患者が人生を十分に楽しむことは難しい。」
なお過去20年では、顔面移植手術は世界で50件以上が行われてきたそうで、メイヨー・クリニックでは最初の顔面移植が実施された2016年以来、2度目の手術であった。
画像は『CBS News 「Mayo Clinic performs face transplant on Michigan man left severely injured by self-inflicted gunshot」(MAYO CLINIC)』『FOX 9 Minneapolis-St. Paul 「Mayo completes face transplant for Michigan man」』より
(TechinsightJapan編集部 A.C.)