この名前でラッキーなこともあった。ハリーさんは「12歳の時に映画『ハリー・ポッター』シリーズの1作目が公開され、『Big Breakfast』というテレビ番組のゲストとして招待されたのです。グウェン・ステファニーやベン・スティラーなどたくさんのスターたちに会うことができました」と嬉しそうに語った。
ハリーさんの姉であるケイティ・サインさん(Katie Sign、36)は、原作が出版された1997年に本が家に届いた時のことを「仕事を終えた父が突然ドアから飛び込んできて、『俺が持っているものを信じられないだろ!』と言って本を振りかざしていたのを覚えています」と振り返った。
当時のハリーさん一家は、その小説のタイトルを見て幼い頃のハリーさんのことでも書かれているのかと困惑したという。デイヴィッドさんはラジオで本のことを耳にし、急いで本屋へ買いに行ったそうだ。
ケイティさんは「私たちは偶然の一致やもの珍しさからその本を読み始めましたが、魔法の物語に引き込まれ、その後何年も読み進めました」と話す。
デイヴィッドさんが当時買ってきた初版のハードカバーは500部しか出版されなかったので、現在ではコレクターたちから“聖杯”と呼ばれるほど貴重なものになっているという。希少な本を中心に扱っているオンラインブックストア「AbeBooks」によると、その価格は40000~55000ドル(約440~600万円)とのことだ。
デイヴィッドさんは2017年10月、がんとの長い闘病生活の末に71歳で亡くなった。ケイティさんは「本はずっと私のベッド横にある窓辺に置かれ、全てのシリーズが並びました。この20年間、どの家に住んだ時も本棚や窓辺に置かれていました。この本は価値が出る前から私たちにとって宝物だったのです」と亡くなった父親がきっかけで読み始めた大切な本について語る。
そんな大切にしてきたこの古い本が、初版ハードカバーで価値があると気がついたのは、デイヴィッドさんが亡くなった直後のことだった。愛する父親からもらった数少ない宝物の1つであったため、当初は売ることは考えず、保護するためにサンドイッチ用の袋に入れて階段下の戸棚に閉まっておいたという。
それから4年が経つも、ハリーさんとケイティさんは本がダメになってしまうことを考えてしまい、純粋に本を楽しむことができなくなっていた。
ケイティさんは「私たちはコレクターではないですし、投資家でもありません。私たちはもう大人ですし、父の考える方法で人生を楽しみたいと思っています。この本はそのために父が残してくれた遺産だと思うのです」と話し、本を売る決断をした。
「父は賢く愛情深い人です。恵まれている人は人生を精一杯生きた人々で、経験はお金よりも価値があると考える人でした。本を売ったお金で、父の願い通りに遺灰をアフリカに散布しようと考えています。そこで自分の子どもや家族と一緒に、新しく素晴らしい思い出を作りたいですね。」
ケイティさんは物語の登場人物である“アルバス・ダンブルドア(Albus Dumbledore)”の言葉を借りて「結局のところ、“夢にふけることで、生きることを忘れるのはよくない”のです」とコメントしており、ハリーさんも「このお金を家族のために使い、父が望んでいたことを成すべき時が今なのです」と明かした。
なおケイティさんが知る限り、イギリスには『ハリー・ポッター』シリーズが発売される前に“ハリー・ポッター”と名付けられた人は2人だけだという。「弟は当時、本の登場人物と同じくらいの年齢だったので、世界的に注目を浴びたのでしょう」と話している。
画像は『Metro 2021年9月20日付「Man named Harry Potter to sell rare first edition Harry Potter book worth up to £30,000」(Picture: Hansons / SNWS)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 iruy)