2008年には娘のジェシカさんを授かることとなった。そして2010年のジェシカさんが2歳の時、ポールさんはふと娘の瞳を覗き込んだ。その瞬間、自分を変えようと決意したそうだ。
「娘は当時2歳で毎朝、私たちの寝室に来ては満面の笑みを見せてくれるんです。あの時は朝の7時半頃でした。私はジェシカの顔を見て考えたのです。『一体どこで間違えてしまったんだろう?』って、それが自分を変えるきっかけでした。」
「この子のため、そして自分のためにもこのまま飲酒を続けるより、病院でメンタルヘルスのサポートを受けた方がいいと思ったんです。」
ポールさんはアルコールへの依存からきっぱりと抜け出すことを決断したが、その道のりは簡単なものではなかった。ポールさんは時々アルコールを欲するあまり頭が爆発しそうになり眠ることもできず、まるで拷問を受けているような気分になったそうだ。
そんなポールさんの心を静めてくれたのが絵を描くことだった。絵画に集中することで彼はアルコールへの欲求を忘れることができたようだ。そして自分を変えると誓ったポールさんは、見事アルコール依存症から抜け出すことに成功した。
その後もポールさんは趣味で絵を描き続けていたが、彼の絵を気に入って購入したいという人まで現れた。のちにポールさんは趣味の絵画を本職として活動し、2014年には1枚の絵が1万5000ポンド(約227万円)で取引されるまでになった。ポールさんは「私は今、安らぎを感じて自分の中に本当の家を見つけたような感じがします」と語っている。
ポールさんは現在、プロのアーティストとして活躍するかたわら「Beyond Recover」というアルコール依存症を改善するプログラムを立ち上げ、以前の彼と同じように苦しんでいる人たちを救うために活動している。
画像は『Paul Lock 2018年1月23日付Facebook、2018年11月16日付Facebook「What an incredible evening, I’m a little lost for words.」』『The Irish Sun 2021年1月5日付「FRESH START Dad who started boozing at 14 & drank a litre of vodka EVERY night shares inspiring before & after photos after recovery」(Credit: Jam Press)』『Paul Lock Art 2019年9月12日付Facebook「You Simply Are II Originals」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 MasumiMaher)