「息子はいつか独り立ちする。息子が転んでも、手を貸さなくていいよ。彼はそうやって人生を学んでいくんだから…」「息子は母から女性の愛し方を学ぶんだ」「母と息子のような関係って、他にはないよね」と言葉が続く。
こうして自分の想いのこもった曲を選んだスクーターさんは式当日、母が夢にまで見たダンスを家族や友人の前で披露した。そしてこの時の動画は映像制作会社「MNF Productions」によって「これまでで最も感情的な母と息子のダンス」と言葉が添えられ、SNSに投稿された。
動画ではスクーターさんが車椅子に乗った母を押して登場すると、周囲から拍手が沸き起こる。その後、父の力を借りて母を立たせたスクーターさんはその場で母をしっかりと抱きしめ、肩に顔をうずめてダンスを始めた。
そのまま1分ほど、スクーターさんと母との美しくも切ない時が流れ、周りにいた人々の目からは涙が溢れた。湧き上がる感情を必死にこらえているのか、スクーターさんの肩が小刻みに震えている。
そして再び母を車椅子に座らせると、スクーターさんはきょうだいを呼んで母を囲んだ。
スクーターさんはその時のことをこう振り返る。
「ダンスが終わった後、きょうだいみんなに来てもらったんだ。だってあの瞬間は母にとって特別だったから。母は子供たちが全員揃うのをいつも楽しみにしていたけど、なかなかそんな機会はなかったからね。だから母には『子供たち全員がここにいるよ。私たちみんながあなたを愛しているからね』ということを伝えたかったんだ。」
こうして最期の願いを叶えたスクーターさんの母は結婚式の数日後、10月19日に息を引き取った。スクーターさんの母は30年間、救急医療隊員として働いており、教会で行われたメモリアルサービスに向かう際には15台の救急車がエスコートし、救急ヘリが飛んだという。
スクーターさんは「亡くなった病院では、母の死がラジオを通してアナウンスされて、病院にいた誰もがそれを聞いたんだ。母のことはみんなが知っていたよ。母が亡くなって初めて、これまでどれだけ多くの人の命を救ってきたのか、どれだけ多くの人生に影響を与えてきたのか…。いい意味で思い知らされたよ。母が成し遂げてきたことは、とてつもなくすごいことなんだ」と明かし、母の命を奪ったALSについてこう述べた。
「母がALSと診断される前は、病気についてほとんど知識がなかったんだ。珍しい病気だし、あえて調べることもなかった。でもALSについて調べていくにつれて過酷な症状や治療法が確立されていないことを知って打ちのめされたよ。」
「ただ母と最期にダンスを踊ることができて本当に良かった。あの時の動画は私の一生の宝物であって、全てだよ。母を亡くして辛いのはもちろんだけど、あの映像には自分だけでなく家族みんなが癒されているんだ。」
「それに動画が拡散したことで世界中から様々なメッセージが届いてね。ALSという病気を知ってもらういい機会になったと思っている。私たち家族は、より多くの人にこの病気を知ってもらいたいんだ。」
「そしてもしALSの患者や家族で助けが必要な人がいたら、『殻に閉じこもらないで』と伝えたい。助けを求めることを躊躇せず、話をすることが大切なんだ!」
画像は『WZTV 2020年10月28日付「Emotional Tennessee mother-son dance shared worldwide after mother passes away from ALS」(MNF Productions)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 A.C.)