結婚69年の91歳夫婦、9日違いで旅立つ「夫の最期、妻は手を握って離さず」…
Rank.1
レジェンドから次世代へのつながりも感じられる。
奄美には歌を聴いて懐かしく思わせることが唄者にとって最高の歌い方であることを表す「なつかしゃや」という言葉がある。朝崎は時代とともに生活環境が良くなり歌い方も変化してその「なつかしゃや」が減ったという。
歌の上手下手ではなく現代の生活の中でそれを表現するのが難しくなっているからだ。様々な唄者を聴き比べることでそれを実感するのも本作ならではの楽しみ方だろう。
アイヌ編はムックリ(口琴)とウポポ(歌)の名手である安藤ウメ子やトンコリ奏者のOKIを中心に参加アーティストは7名と奄美に比べ少ない。
これはブックレットの「座談会」でも触れているが、アイヌの伝統的な音楽が一度失くなりかけ、若い人達が掘り起こしている段階にあるからだ。
日常でアイヌ音楽に接する機会はあまりないが、改めて聴き込むとその深さに驚かされる。民謡というよりは前衛音楽のようでもあり、ある時はいわゆる「ワールドミュージック」を思わせる。
コラボレーション編では奄美の朝崎郁恵とアイヌのrekpo、kapiw&apappo姉妹、OKIのコラボでさらに幻想的な世界観に引き込んでくれる。
偉大なる自然を敬い、歴史に翻弄されながら北の大地と南の島で歌われてきた音楽は、朝崎郁恵が「昔は大地がつながっていたのではないかと思うほどルーツがいっしょ」とたとえるように魂のつながりを感じる。
インターネットやスマホの普及で情報が溢れる時代となり、慌ただしい毎日が常態化している今、しばし耳を傾ければ忘れていた何かを思い出させてくれる。そんなアルバムが出来上がった。
(TechinsightJapan編集部 真紀和泉)