ベーカーズフィールドにも近いカリフォルニア州のサンホアキン・バレーという町で12日午前0時40分、フランシスコ・セルナさんという73歳の男性がベーカーズフィールド署の警察官に銃で撃たれて死亡した。
セルナさんは昨年から認知症の症状が重くなり、事件が起きた深夜も家を出て徘徊していた。発端となったのはセルナさんと同じブロックのある家庭からの911番通報であった。「妻が帰宅して荷物を降ろしていたところ、ポケットに片手を入れながら男が近づいてきた。行動が奇妙で、妻はリボルバーを携帯しているように見えたと言っている」というもので、複数名の警察官が現場に急行した。
当時の現場は真っ暗でセルナさんはジャケットのポケットにずっと手を入れたまま歩いており、手を出してポケットの中身を見せるようにとの命令に応じることはなかった。そこで警察官のひとり、レーガン・セルマンが6メートルほど離れたところから発砲。7発も撃って彼の息の根を止めた。ところが近づいてそのポケットの中身を確かると、出てきたのは十字架のみであった。発砲したセルマンは昨年7月に同署に赴任し、怪しいと判断した人物に対する発砲の経験はこれまでなかったという。
なお勤続28年のベテランで今月から新・警察署長となったライル・マーティン氏はこの事件について、「職員に対しては認知症患者に対応するための訓練も行っています。セルナさんには大変お気の毒でしたが、この事件の8時間ほど前に別の事件を起こしていたことがわかりました」と述べている。ある家庭に押し入ってその家人を外に追いやろうとし、脅す際にはポケットに手を入れて銃を持っているフリをしたとのこと。しかし911番通報がなされていないため、事件の真相は今一つ明らかになっていない。
「私の父は昨年から認知症の症状が進んでしまいましたが、銃など所持していません。年金暮らしをしている73歳の普通のおじいちゃんです。こんなことで発砲されるようでは、高齢者や障害者の命をどうしたら守れるのでしょうか」と怒りをあらわにするのは息子のロジェリオ・セルナさんだ。
認知症患者を抱える家庭にとって徘徊は実に深刻な悩みである。以前から警察もセルナさんの認知症による様々な問題行動を把握していただけに、この事件をきっかけにそのコミュニティの人々からは警察に対する懐疑心、怒り、今後への不安が噴出しているという。
出典:http://www.latimes.com
(TechinsightJapan編集部 Joy横手)