体に起きる様々な病気や現象を遺伝子学的に捉え、解明を図ろうとする最近の医学。食生活や生活習慣だけではないだろうとして、肥満についても長年にわたる遺伝子学上の研究が行われてきたが、ついに米シカゴ大学のある研究チームから興味深い発表があったようだ。
心臓病や糖尿病など、肥満がもたらす数々の病気が医療保険制度にとっての大変な負担となっているアメリカ。この肥満大国においても、同じような高脂肪食を摂っていても太らない者がいることや、アフリカ系の女性が非常に太りやすいことから、肥満を引き起こすものは生活習慣や運動量だけではなく、「脂肪・肥満関連遺伝子(Fat mass and obesity associated=FTO)」が絡んでいるとの説を疑う者はいない。
遺伝子による肥満のメカニズムを解明すべく、このほどシカゴ大学の遺伝学者マルセロ・ノブレガ博士と研究チームはマウスを用いた実験を行い、IRX3という遺伝子が肥満に大きく関与していることを『ネイチャー』誌に発表した。実験に用意されたのは、IRX3遺伝子を持つマウスと持たないマウス。その遺伝子を持たないマウスは、持っているマウスより体重が平均して3分の1ほど軽くなった。IRX3遺伝子が発現すると動物は肥満になると考えてよいという。
そして興味深いのは、IRX3遺伝子を持っていてもそれが機能しない状態に視床下部でコントロールしておくと、同遺伝子を持たないマウスと同じように痩身効果があったということ。肥満にはIRX3遺伝子が強く関与しているが、この発現をきちんと制御できていれば怖くない、そしてそれを担っているのは脳の視床下部、つまり肥満と脳の働きは無関係ではないというのだ。ノブレガ教授は「IRX3や関連遺伝子のメカニズムについての研究をさらに進め、いずれは肥満防止の薬の誕生につなげたい」と意欲をみせている。
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(TechinsightJapan編集部 Joy横手)