双眼鏡を手に、早朝の東の空を仰いでアイソン彗星を探す人々がいっきに増えていた最近だが、ここに来て突然「見えなくなった」との声が飛び交っている。残念ながらNASAが数日前に発表した通り、アイソン彗星はすでに小天体としての一生を終えてしまったのであろうか。
これからが観測の本番と期待が高まっていた、今世紀最大の彗星ともいわれる「アイソン彗星」。日本の29日に太陽に最も近づき、そこから約1週間はNASA(米航空宇宙局)が監視する太陽観測衛星“STEREO(Solar Terrestrial Relations Observatory)”の画像などに頼るのみとなり、来月上旬に再び人々が肉眼で捉えられるまでに復活し、同下旬には地球にも最接近すると報じられてきた。
しかし米国の25日、NASAは科学者らの意見をもとに「この彗星の核がすでに崩壊している可能性がある」と発表。小天体としての一生を終え、膨大な量の塵を放つのみとなっているのではないかというのだ。その説を裏付けるように、残念ながらその日を境にアイソン彗星は尾の輝きを弱め、昨日からは世界各地で「肉眼ではまったく見えない」との報道が相次ぐようになっているもようだ。
彗星は氷、塵、岩石などでできている太陽系小天体が、太陽に近づいた時に太陽が放つ熱で温められ、太陽風(高温で電離したプラズマ)を受けて後方にガスや塵を放出し、そこに光が反射することで美しい尾を引く。しかし強い引力により太陽に向かってぐんぐん落下する現在の状況において、太陽風はもはや“猛烈な嵐”の威力。崩壊したとしても決して不思議はないそうだ。
しかし「STEREOの画像からは今なお彗星が存在していることを感じる。崩壊と結論づけるのは尚早だ」とする科学者もいるもよう。今後はNASAが提供する情報やそうした衛星画像に注目し、12月上旬に再びの世紀の天体ショーが繰り広げられることを期待するのみである。
(TechinsightJapan編集部 Joy横手)