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【名画クロニクル】それなりにスカッとする和製ミュージカル映画 「続 若い季節」

日本におけるミュージカル映画の歴史はなかなかお寒い。
クレージーキャッツの60年代東宝映画は一応ミュージカルだが、これらはクレージーキャッツというグループの音楽芸をそのまま映画にしたものであるから別枠とすると、ほとんどそれらしい作品がない。
しかし、わずかながら正面からミュージカル映画にぶつかって、見事に玉砕しながらも、それなりに笑えて楽しい映画がある。1964年の古澤憲吾監督作品「続 若い季節」である。

この映画は、ハッスルチャームガールこと、ミエ(中尾ミエ)、まり子(園マリ)、ユカ(伊東ゆかり)の3人に、女社長役の淡路恵子、社員役の谷啓など、誰も彼もが何の脈絡もなしに、いきなり踊って歌い出すという、もの凄い映画である。

しかも、雑然とした会社の階段や秘書室などという、およそミュージカル的な演出とはほど遠いロケーションで歌い踊る。

歌詞は日本語であるのは当然としても、日常会話や愚痴まで歌ってしまうと、非常に気恥ずかしい。

「♪なめんなよ~」「♪若いもんはなってない~」「♪悪いおじさんやっつけろ~」などという具合なのだが、ストーリー自体は実に明るい。

プランタン化粧品なる会社が社運を賭けて発売した男性用化粧品の売り込みに当たって、社員が奮闘するという物語なのだが、あまりにも舞台セッティングが普通の会社の日常なものだから、ドタバタ物語として楽しく見れてしまうのである。

制作がクレージーキャッツ所属の渡辺プロダクションなので、植木等や桜井センリなどがチョイ役で顔を出すのも、映画ファン的には面白いところだ。

そして、これは映画のみならず、舞台ミュージカルやオペラなどでも同じなのだが、輸入物ではない純国産のミュージカルやオペラは、戦後から現在に至るまであまり振るっていない。

同じ舞台でも演劇に比重を置いたものには素晴らしいものが多いのだが、音楽に比重を置いてしまうと、一気に妙な雰囲気になってしまうようだ。

これは日本という国が、外国文化をきっちり模倣して輸入したあと、長年かけて自国用にアレンジしていく過渡期の現象のようだ。

これが程良く熟成したのが、宝塚歌劇であり、過渡期のまま尻すぼみになってしまったのが、ミュージカル映画などであるとも言えるであろう。

そうした事情も考えると、この「続 若い季節」という映画は、才気走った60年代の日本映画界のひとつの挑戦として、微笑ましくも楽しく見れる作品である。
(TechinsightJapan編集部 真田裕一)