12月13日の月曜日、フランス東部ブザンソンで、17歳の少年が2本の刀を持って幼稚園に押し入り、園児21人と教員1人を人質にして立てこもるという信じがたい事件が起こった。警察当局が近県のストラスブールの対テロ特殊部隊(GIPN)を動員し、迅速な対処を行った結果、少年は約4時間半後に人質全員を解放し身柄を拘束された。
12月はフランス国民にとって、宗教上大きなイベントであるクリスマスの準備でとても忙しい時期である。子供達は今週末から始まるクリスマス休暇と、前からお願いしているクリスマスプレゼントがちゃんともらえるかどうかで頭がいっぱいだ。そんな時期に、何の罪もない幼い彼らが突然、安全であるはずの幼稚園で危険にさらされてしまうとは一体誰が想像できようか。人質にとられた子供達と教員、そしてその家族が味わった4時間を考えると背筋が寒くなる。
犯人である17歳の少年は精神安定剤を常用していたということだが、事件を起す数日前から服用していなかったことが判明している。少年が2本の刀で武装し、興奮状態で叫びながら幼稚園に押し入ったのは午前8時半。暴力的な最初の印象とは程遠く、実際に人質をとり立てこもった後は、子供達を脅すわけでもなく、少年は室内の隅に座り鬱状態に入っていたという。
そんな状況の中、警察の説得により約5人ずつ園児達は解放され、午前11時の段階で、残された人質は5人の園児と教員1人のみとなっていた。おなかをすかせている子供達のために昼食を差し入れるということを承諾した少年は、配達人を室内に入れる際、特殊部隊により捕まった。負傷者は1人も出ず、少年も身柄を拘束され事件は無事解決となったが、少年がこの幼稚園に立てこもった目的は現在も分かっていない。
人質に捕らえられた子供達の家族をはじめ200人以上の住人が現場を見守る中、シャテル国民教育相が昼前に到着、メディアが生中継で一部始終を報道するなど地域一帯は緊張に包まれ騒然とした。
今回の事件で特に国民を震え上がらせたのは、自己防衛のできない子供達が人質にとられたことだ。少年の行動次第では大惨事になっていたかも知れない。今後、フランスの教育機関の更なる安全対策が問われる。
(TechinsightJapan編集部 福山葉月)