バージニアさんをまずトミーさんの隣の部屋に移し、その後ベッドを隣に運んで様子をみた。
夫妻の娘カレン・クリーガーさん(Karen Kreager)は、バージニアさんが移動してきた時のことを「病室で両親がお互いの姿を初めて見た瞬間、顔がパッと輝いたのですよ」と嬉しそうに語り、このように述べた。
「父は母が入室してきた時、目を開けていました。コミュニケーションをとることはほとんどできませんでしたが、小さな声で何かを囁いているようでした。でも父は、母がすぐ隣で寄り添ってくれていることをちゃんと分かっていて、2人はその後ずっと、お互いの手を握ったままでした。」
「そして2人が隣同士になった最初の日、私たちは両親と一緒に過ごしたビーチでのバカンスや、休暇の御馳走のことなど、思い出話に花を咲かせたのです。それも病棟を行き来することなく、2人のことを同時にケアしながらね。ただ私たちにとって最も重要だったことは、『両親が一緒にいる』ということでした。」
バージニアさんは、この病院の配慮をとても喜んでいたそうで、成人緩和ケアプログラムの医長モハナ・カーレカー氏(Dr. Mohana Karlekar)は、当時のバージニアさんのことをこのように振り返った。
「ベッドを移動した直後から、バージニアさんは夫の手を握り、本当に愛おしそうにしていました。そして彼が亡くなってから数日後、私にこう言ったのです。『あんな状態だったけど、私は穏やかな気持ちでいられたの。だって夫の命が尽きるまで、あそこにずっといたかったから』とね。」
トミーさんが亡くなったのは、夫妻の69回目の結婚記念日の一日前だった今月8日で、バージニアさんは9日後の17日に息を引き取った。ともに家族に見守られながらの旅立ちで、バージニアさんが亡くなったことを伝えた訃報サイトにはこんな言葉が添えられた。
「なんて素敵なラブストーリーだろう。この世でも、死ぬ時も、そして永遠の命を得た後も、2人はいつも一緒だよ。」
なおテックインサイト編集部では、夫妻に粋な配慮をしたVUMCに病院の柔軟な対応や、患者と接するうえで普段から心がけていることなどについて話をうかがうべく取材を申し込んでいる。
ちなみに昨年11月には、米オハイオ州で79年間連れ添った100歳の夫婦が20時間差で旅立った。急に体調を崩し、同じ病室で手をつないだままだったという。
画像は『VUMC Voice 2023年9月1日付「Holding hands one more time: Compassion and collaboration allow couple to spend the most precious time together」(Photo submitted by the family)(Photo by Erin O. Smith)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 A.C.)