本当に特別なものなのかを調べてもらうことにした。貝は樹木の年輪と同じように年を取るごとに貝殻に層が増えていくといい、1つの層は1年を表すため研究者らはこの層から貝の年齢を推定するという。実際に貝殻に増えた層を数えてみると、このホンビノスガイの年齢は214歳であり、2世紀以上も生きていることが判明したのだ。
214年前の1809年は、第16代アメリカ合衆国大統領であるエイブラハム・リンカーン(Abraham Lincoln)の誕生年だった。このことからブレインさんは英語で二枚貝を意味する“Clam”という英単語を使い、発見したホンビノスガイに“エイブラクラム・リンカーン(Aber-Clam Lincoln)”と名前を付けた。
同研究所の関係者によると、エイブラクラム・リンカーンは史上4番目に長生きの貝であると考えられているという。最も長寿の貝は2007年にアイスランド沖で発見された“ミン(Ming)”という名前のアイスランドガイだ。ミンは507歳であると記録が残っており、これは世界最高齢の生き物として2013年11月にギネス世界記録として登録されている。
エイブラクラム・リンカーンを含めホンビノスガイの驚異的な寿命の長さについて研究者らは、ホンビノスガイの代謝率が驚くほど低いことが一因であると考えている。カンザス大学が299種類の絶滅した二枚貝と現存する二枚貝のエネルギー必要量を調べたところ、エネルギー必要量が少ない種は絶滅を免れたことが判明した。同研究で共同リーダーを務めたブルース・リバーマンさん(Bruce Lieberman)は米ネットメディア『Christian Science Monitor』にこのように語っていた。
「適者生存の代わりに、生命の歴史を表すより良い比喩表現は“最も怠惰な者は生き残る”、あるいは“少なくとも怠惰な者は生き残る”になるかもしれませんね。」
なお貝の正確な年齢を知るためには、解剖のような詳しい検査が必要になるという。最高齢のミンのケースでは、詳細検査を行ったことで当初推測されていた年齢より104歳も年を取っていたことが判明していた。このことからエイブラクラム・リンカーンもさらに高齢である可能性が十分にある。
エイブラクラム・リンカーンの発見がニュースになると話題を呼び、200年以上も生きた貝の姿を一目見ようと一日に100人もの人が同研究所を訪れたという。一時的に人気を集めたエイブラクラム・リンカーンだったが、先月24日にメキシコ湾沖に放たれた。ブレインさんは「飼育環境下で長く生きることは難しいだろうと考えました。エイブラクラム・リンカーンは海に留まる権利を得たのです」とコメントを残した。
画像は『Tallahassee Democrat 2023年2月27日付「Clam believed to be 200+ years old ― named ‘Aber-clam Lincoln’ ― found at Alligator Point」(Alicia Devine/Tallahassee Democrat)』『Gulf Specimen Marine Lab 2023年2月20日付Facebook「Aber-clam Lincoln in all his glory!」「The oldest Ocean Quahog is “Ming” which was found off the coast of Iceland in 2006」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 iruy)