手術後の高い回復力が認められたタルーラちゃんはこの治療を受けることができたという。
「手術の際、回復には時間がかかると思われていましたが、翌日には元気な姿を見せてくれました。まだ幼いタルーラですが、陽子線治療を受けられる強さがあることを医師たちに示したのです」とゾーイさんは語る。
タルーラちゃんは今後「ロイヤル・ビクトリア診療所(Royal Victoria Infirmary)」で化学療法を受けるそうで、その前に卵巣から卵巣皮質(卵巣の卵を作る部)を取り出して凍結する予定だという。
不妊治療クリニック「TFP Fertility」の医長で卵巣凍結の専門家であるティム・チャイルド教授(Tim Child)は、この技術について次のように述べている。
「化学療法は卵巣にダメージを与えます。その治療を受ける前に卵巣組織を凍結し、将来的に体内に戻して卵子ができるかどうかを確認するというものです。この方法はまだ広く行われているわけではなく、成人や思春期以降の女の子に多い傾向があります。また高齢の患者さんでも効果があることが分かっており、実際に冷凍保存した卵巣組織を体内に移植した後に赤ちゃんが生まれた例もあります。」
「幼い子供でも組織の凍結は可能ですが、1歳5か月という年齢は私が知る中では最年少です。でも彼女が妊娠を希望する頃にはきっと研究ももっと進んでいることでしょう。患者さんが幼い子供の場合、未熟な卵細胞が極めて小さいことが難点です。私たちは腹腔鏡を使って卵巣の一部を切除した後、組織を調べてから凍結します。未熟卵の中で最も成熟したものを見つけ、その中に卵胞があるかどうかを顕微鏡で確認するのです。この組織には何千もの未熟卵がありますが、あまりに小さいので見ることができません。将来的に卵巣組織を移植した際に自然妊娠のチャンスが得られるようにしたいと考えているため、私たちは少しでも多くの未熟卵を探しています。」
「いつか母親になれるように」そう願ってタルーラちゃんの卵巣凍結を決意したというゾーイさん。そんな彼女は愛娘へ思いをこのように語っている。
「私たちは娘の未来に希望を抱いています。幸いにも腫瘍は早期に発見されました。タルーラはいつも笑顔で、何事も前向きにとらえています。命を救うことが第一ですが、化学療法によって不妊になる可能性があると言われた時、私は脳腫瘍の次にそれが怖いと思いました。娘はまだ1歳5か月ですが、いつかは母親になることを考えるでしょう。なので娘の卵巣組織を凍結保存して、将来子供を持つ可能性を残すことは素晴らしいことだと思います。私はずっと母親になりたいと思っていたので、娘にもその機会を与えてあげたいのです。」
画像は『The Mirror 2022年7月23日付「EXCLUSIVE: ‘We’re freezing our 17-month-old daughter’s ovaries so she can be a mum one day’」(Image: Matthew Pover)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 上川華子)