ミッシェルさんはRobotic Gynecology & Women’s Healthの弁護士からメールを受け取った。そこにはミッシェルさんが嘘の投稿とオンライン上での嫌がらせをしたとして、ソン医師の名誉棄損および中傷、精神的苦痛により損害賠償100万ドル(約1億900万円)を求める内容が記されてあった。ソン医師から訴訟を起こされて1年近くになるミッシェルさんは、このように話している。
「訴えられたと知って最初は信じられない気持ちでした。でも名誉棄損ではありません。私は全て真実を書いたまでです。ソン医師は私が定期検診で行っただけなのに超音波検査までして、不適切な請求をしたのです。私は自分の投稿に後悔していません。起こったことそのままの真実を書いて、他の人に注意を促しただけです。」
サイト「Yelp」に綴られたミッシェルさんの低評価に対し、Robotic Gynecology & Women’s Health側は「超音波検査は全ての患者に行っている。深刻な病が隠れていた場合、この検査で明らかになることもあるからだ」と反論したようだ。ミッシェルさんは自分の投稿を後悔していないと主張するものの、訴訟後は口コミサイトから投稿を削除した。しかし思いもよらぬ訴訟で、自分を擁護するため既に2万ドル(約220万円)の法的費用をつぎ込んでいる。ソン医師はミッシェルさんが投稿を削除した後も訴訟を取り下げようとせず、法廷ではミッシェルさんの個人的な診察記録までもが公にされてしまったという。
「私はレビューを書いただけです。アメリカでは誰もがどんなことにでも訴訟を起こすことができる国ですが、被害者は自分の擁護のために費用を払わなければならず、出口などありません。私はソン医師の被害者になってもう1年近くも経ちました。」
しかし一方で、Robotic Gynecology & Women’s Healthの弁護士はこのように反論した。
「米憲法修正第1条では表現や宗教の自由が保障されていますが、それは人を中傷してもいいということではありません。誰でも自分の意見を口にすることはできますが、あからさまな嘘の発言は小さな事業者や医療業務に大きなダメージを与えることとなります。」
口コミサイト「Yelp」のスポークスマンは「企業が個人の客を訴えるというのは稀です。訴訟を起こすことはカスタマーサービスとしては良い代案ではないと企業側は常に考えるものです。ちなみに、カリフォルニア州やテキサス州には自分の経験を正直に発言した際に、事業者がそれを封じ込めようと訴訟を起こすことを禁じる州法が定められていますが、ニューヨークにはそれがありません」と述べている。
100万ドルの損害賠償および裁判費用を請求されているミッシェルさんは現在、クラウドファンディングサイト「GoFundMe」にアカウントを設置し法的バトルへの募金を呼びかけている。ミッシェルさんは「このアカウントを立ち上げることで、人々に米憲法修正第1条の権利適用が世間ではまかり通るべきだということと、その権利を利用した者を罰するべきではないということを伝えたいのです。それに、この憲法に倣ったことで患者のプライバシーが法廷で暴露されるべきではないのです」と語っているが、アカウントには目標金額8万ドル(約870万円)に対し2,000ドル(約22万円)が集まっているのみで、「超音波検査を望んでいなかったのであれば、されるまえにはっきり断るべきだったのでは」「だからネットで容易く人を非難する書き込みをしたらダメなのよ。高い授業料になったわね」「でもこれって医療の詐欺行為も同じじゃない? 訴訟を取り下げられるよう頑張って」「個人情報を公に流すのは明らかに悪いことだろ。医師が悪い」といった賛否両論の声があがっている。
画像は『CBS News 2018年5月30日付「Doctor sues patient for $1 million for posting negative reviews online」(CBS NEW YORK)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 エリス鈴子)