具合が悪い子供を良い医師に診せたいのはどの親でも思うこと。しかしこの母親は病院内で「白人ではない医師は息子をちゃんと診察してくれない」と人種差別発言をし、順番を待つ周りの患者を驚かせた。その様子が目撃者に動画に収められ公開されたところ、瞬く間に拡散したことをカナダのメディア『Toronto – CBC News』など複数メディアが伝えている。
カナダのオンタリオ州ミシサガにあるウォークインクリニック「Rapid Access to Medical Specialists」で6月18日、診察の順番待ちをしていたヒテシュ・バードワジ(Hitesh Bhardwaj)さんは、信じがたい光景を目の当たりにした。
ある女性が8歳ぐらいの息子を連れてクリニックに訪れた。胸が痛むという息子を医師に診てもらいたいと言うその母親は、受付で白人の医師の診察を要求した。「英語を話せる茶色の歯をしていない白人医師がいい」とあからさまな差別発言をした母親に、スタッフは白人医師が今はいないこと、午後4時頃にならないと来ないことを説明した。
すると母親は「なんてひどい国に住んでるの。この建物に白人の医師が全くいないというの!? この国でこんなに白人の扱いが酷いなら、私たち白人はみな自分を撃ち殺すしかないわね」と衝撃的な発言で受付スタッフに食い下がったのだ。この母親が「すでに5時間半も待っていたのに、診察したのは褐色の医師で息子をまともに診察してくれなかった。医師の歯は茶色で英語もまともに話せないし、何の助けにもならなかった」と文句を言っている姿がヒテシュさんの撮影した動画に収められている。
母親の差別発言を待合室にいた人は目の当たりにし、大きなショックを受けた。なかには「そこまで言うなら、子供をこの小さなクリニックではなく病院に連れて行けばいい」「息子が体調不良って言うけど、彼の一番の問題はあなたのような無礼な人種差別者が母親であることよ」と批判した人もいたようだ。
やがて「白人医師がいないならせめてカナダ生まれの医師に診てもらいたい」と母親は要求したが、差別行為に我慢ならなかった目撃者の1人が警察に通報した。しかし駆け付けた警察官は、この件が脅迫や暴行の類ではないことから母親を逮捕することはなかったという。一部始終を目撃していたヒテシュさんは、自身も5年前にインドから移住してきた身であることからあからさまな差別行為にショックを隠せず、『Toronto – CBC News』の取材でこのように語っている。
「私はこの国に住めることを誇りに思っています。今でも目にした光景が信じられず、頭に何度も思い浮かんで怒りと腹立たしさを感じています。英語を話すのに白人である必要はどこにもありません。」
警察によると最終的にこの母親の子供は医師の診察を受けたようだが、実はこの母親による差別行為は初めてではないようだ。子供のプライバシー保護ために母親の顔は明かされていないものの、拡散した動画を見てこの女性を知っているという2人が『CTV News』の取材に「すぐにあの人だとわかった」と話している。