英ニューカッスルの東に位置するタイン・アンド・ウィアのサウス・シールズという街で昨年1月、美容師の母レベッカ・テルフォードさん(25歳)は当時9か月の娘のレイラ・ジーンちゃんをベビーカーに乗せて自宅からほど近い通りを買い物のために歩いていた。そこへ突然近付いて来たリザス・アブドゥラ(33歳)が、レイラ・ジーンちゃんの顔一面に唾を吐きかけた。
驚いたレベッカさんは、リザスに怒鳴った。するとリザスは「黙れ! 白人は子供を産むな!」と叫び立ち去って行った。予期せぬ差別行為に大きなショックを受けたレベッカさんは、それでも証拠に男の姿を写真に収めようと携帯電話の操作を試みたが、手が震えてしまいできなかった。通行人の女性がレベッカさんにティッシュを渡し、慰めてくれたという。
レベッカさんは警察よりもまずはかかりつけの医師に電話をした。すると医師は、男の唾によりレイラ・ジーンちゃんが結核に感染したことも考えられるのでBCGの予防接種をする必要があるかもしれないと告げ、レベッカさんの心配は極度に達した。幸いにも「心配ない」と診断され安堵したものの「ストレスと不安に押し潰されそうでした」とレベッカさんは語る。
その後リザスは防犯カメラでその素性がすぐ割れることとなり、数日で逮捕されたという。リザスは、過去にも2件白人女性に対し同様の差別行為をしたことで有罪判決を受けていた。
2月21日にサウス・タインサイド治安判事裁判所で行われた裁判で、ヴィック・ラフェィ弁護人は「被告は犯行当時、精神が不安定な状態だった」と述べた。レイラ・ジーンちゃんに攻撃した同年の7月から9月の2か月間、リザス被告は入院し精神科での治療を受けており、退院後もその治療は続いていることが明らかとなっている。
今回、法廷では「人種差別的な一般暴行」を働いたとして、リザス被告は1年半の執行猶予つき8か月の懲役という判決の他にリハビリと精神疾患の治療要請を受けたが、本人は出廷しなかった。
レベッカさんは「娘が唾を吐きかけられたとはいえ暴行を加えられたわけではなかったので、警察がきちんと捜査してくれるのか不安でしたが、彼らは迅速に男を逮捕してくれてそれは感謝しています。でも正直、被告に下された判決は軽いのではないかと思っています。私は差別主義者ではないですが、もし白人の私が彼に同様の行為を働いたら、きっと対応はまた違ったものになっていたでしょう。無抵抗の小さな赤ちゃんに、このような人種差別行為をするのは全く持って最低です」と話しており、男への怒りを露わにしている。
レベッカさんはFacebookに今回の出来事を投稿しシェアを求めている。人種差別が絶えない社会ゆえに、被害者の立場であるレベッカさんでもSNSに投稿することによって非難を浴びる可能性もある。そのため「あくまでも、この男のみの注意喚起の投稿であって、イスラム教徒の人たちへの差別行為ではありません」と注意書きをした上で投稿されているという。
つい先日も、アメリカ出身の白人モデル・カーリー・クロスが芸者姿で雑誌の撮影をしたことで「人種差別」と糾弾され謝罪するという出来事があった。レベッカさんの「もし立場が逆だったなら…」という言葉に考えさせられずにはいられない。
出典:https://www.facebook.com/rebecca.telford.7549
(TechinsightJapan編集部 エリス鈴子)