今年も岩手県遠野産ホップをふんだんに使用した『一番搾り とれたてホップ生ビール』が10月27日から期間限定で販売される。河童や天狗などが登場する『遠野物語』で知られる遠野市は、「民話のふるさと」と言われているが、ここで栽培されている作物にホップがある。1963年に始まった遠野のホップ栽培は順調な推移を見せ、1987年には生産量日本一に。しかし現在は、ピーク時の4分の1の生産量まで落ち込んでいる。そんな中、遠野市を「ホップの里」から「ビールの里」にするためのプロジェクトを、同市とキリンビールが協働で展開中だ。
『TONO BEER EXPERIENCE』は、遠野市の大切な資源である遠野のホップを守り、ホップの魅力を最大限活用して地域活性化を目指すまちづくりプロジェクト。生産者、遠野市、キリンビールが一体となって50年先を見据えて取り組んでいる。遠野市農家支援室の阿部室長は「ホップをはじめ、(スペインで親しまれているビールのおつまみ野菜である)パドロンなど、遠野の美味しい食をビールでつなぎ、50年先の遠野を“ビールの里”にしていきたい」と希望を語る。
8月22日・23日には、今年で14回目を迎えた『遠野ホップ収穫祭』が遠野市中央通りの蔵の道ひろば特設会場で開催された。これは“ビールの魂”とも言われるホップの収穫を祝うイベントで、約2,500人ものビールファンが訪れた。「ホップ畑見学バスツアー」「ホップ体験コーナー」などでホップについて理解を深めた参加者たちは、パドロンなど遠野の旬の食材を使った料理とビールを楽しんだ。遠野市産業振興課の菅原康係長は、「今回のホップ収穫祭をスタートにして、遠野市民が未来のまちづくりに様々な形で参加して、一緒に遠野を盛り上げていきたいと思います」と期待を寄せる。
遠野市とキリンビールのホップ契約栽培は、今年で52年目。今年の夏に収穫したばかりの遠野産のホップを贅沢に使用した『一番搾り とれたてホップ生ビール(期間限定)』は今年で発売12年目を迎える。多くの場合ホップは収穫後乾燥させて使用するが、同ビールでは収穫したばかりのホップを水分が含まれた生の状態で凍結させ、細かく砕いて使用しているため、遠野産のホップの個性を最大限に引き出し、瑞々しく華やかに香る仕上がりだという。缶にもホップのイラストが描かれており、まさにホップの魅力を存分に堪能したいビールと言えそうだ。
遠野市は現在、少子高齢化により就農人口が減少、若者が都心に流出していることなどの課題を抱えている。キリンビールでは、今後もホップの生産者激減への対策だけではなく、観光による集客も含めた地域活性化のため、遠野の大切な資産であるホップを活用し、遠野のまちづくりに関わっていきたいとしている。50年後に遠野市が「ビールの里」になることを目指し、『TONO BEER EXPERIENCE』の取り組みはこれからも続く。
(TechinsightJapan編集部 関原りあん)