大気汚染による健康被害の恐ろしさを誰もが知る現代、「どうか自然環境に優しいエネルギーの開発を」と人々は真剣に望んでいる。だが、開発されたそのエネルギーを国家が事業として真に認めることも重要となる。イギリスでは、そんな声に応えたバスの公道デビューがついに決まったようだ。
英南西部のバースからブリストル空港を結ぶバスに、環境に優しい新型の車両が20日にデビューすることが報じられた。その名も“Bio-Bus(バイオ・バス)”。40人乗りで、エネルギー源は人糞からのメタンガスや廃棄処分となった食糧をメタン発酵させたバイオ・ガス。人糞に限れば、約5人が1年間に排泄する量で299kmも走行できるそうだ。走行により排気ガスは出るが、その量はディーゼルエンジンのバスに比べればグンと少なく、地球環境のことを考えれば安心・安全に勝るものはないとたいそう評判だ。
そのバイオエネルギーを供給しているのは、英・上下水道管理会社「Wessex Water」の子会社である「GENeco」。人糞や廃棄処分となった食糧から得られたガスが、このような公共交通事業に採用された喜びについて、ゼネラルマネージャーのモハメッド・サディク氏は「バイオ・バスは地域密着型のエネルギー。市民の皆さんのおかげで成り立っています」と説明している。
自然環境保護のためにブリストルの下水道や廃棄物処理場で奮闘するエンジニアや作業員の努力を思えば、バスの排気に多少のニオイを感じたとしても、それに不満を言う市民もいないもようだ。この話題を紹介した英メディア『mirror.co.uk』が行ったWEBアンケートでは、70%以上の人がこれを称賛。人糞は長い間、膨大な廃棄物として嫌われ者であったが、有機農法といい、バイオ・ガスといい、これを利用しない手はないという時代に戻っていることを強く感じさせる。
※ 画像はmirror.co.ukのスクリーンショット。
(TechinsightJapan編集部 Joy横手)