米国市民がエボラ出血熱に対して一層の警戒感を募らせている中、シエラレオネに派遣されてエボラ患者の治療にあたり、このほど米国に戻った看護師が微熱にもかかわらず隔離措置を拒み、ボーイフレンドの待つ自宅へと戻ってしまった。非協力的で理解に苦しむとの声が相次いでいる。
米国の30日、メイン州のポール・ルパージュ知事は、エボラ出血熱に苦しめられている西アフリカから米国に帰国した看護師、ケイシー・ヒコックスさん(33)がメイン州の自宅に戻っていることを発表した。ニュージャージー州のニューアーク・リバティー国際空港に24日に到着したヒコックスさんは、シエラレオネでエボラ感染患者の治療にあたっていた医療スタッフの1人。帰国時に発熱が確認されたため、ニュージャージー州の病院で隔離措置が取られたが、現地では防護服の着用や消毒など常に手順を守っていたことを理由に断固これを拒否。本来であれば11月10日まではニュージャージー州の病院で体調観察が続けられるべきであったが、ヒコックスさんはメイン州北端にあるフォートケントの自宅に戻ってしまった。
さっそくボーイフレンドとともにマウンテンバイクデートを楽しむ様子が報じられ、各方面から批判の声が相次いでいるヒコックスさんだが、その後も警察が出動して2人の行動を追跡するなど大変ものものしい雰囲気になっている。ヒコックスさんが自分の体調管理は自己責任でと主張する一方で、ルパージュ知事は「ガイドラインに従わせられなかったのは失敗。州民の公衆衛生と安全のため、法が許す範囲でこちらもあらゆる権利と手段を行使し、ヒコックス氏隔離措置に向けた説得を続けていく」と説明している。
エボラ出血熱の感染大流行(パンデミック)だけは何としても避けなければならない中、ガイドラインを守らない人物が現れ、その要求がまかり通ってしまったことは痛い前例を作ったというほかない。風邪を思わせる初期症状を訴えている時期にエボラ出血熱ウイルス感染の有無をPCR法で検査しても、発熱から72時間経つまでは血中ウイルス量は少なく、陰性あるいは偽陰性と判断されるケースが少なくない。シエラレオネで治療にあたっている「国境なき医師団」の報告によれば、陰性とされた14名のうち9名が後の検査で陽性に転じたという。
※ 画像はnydailynews.comのスクリーンショット。
(TechinsightJapan編集部 Joy横手)