しばらく前からバイアグラの副作用の一つとして、シロかクロかと注目を浴びるようになっていたのが失明の危険性というもの。オーストラリアの研究チームがこのほど「やはりクロ、最悪の場合は失明する」との最新の研究結果を発表した。
ED治療薬「バイアグラ(シルデナフィル)」について、副作用の一つとして恐れられていたのが様々な症状を呈する眼疾患であった。ところが多くの医療機関が「大丈夫」と言うため、愛用者の戸惑いも薄れていた感じがある。だがこのほどリサ・ニヴィソン=スミス氏を代表とする豪ニューサウスウェールズ大学(University of New South Wales)の研究チームは、「やはりクロ」と発表。バイアグラの使用はどうか慎重にと呼びかけられている。
視界として目に入ったものは光の信号として網膜から脳に伝えられ、それが映像となるが、スミス氏は眼科専門誌『Experimental Eye Research』に、「ネズミで行った実験で、シルデナフィルには網膜からのその伝達に重要な役目を果たす酵素を阻害する作用が認められた」と発表。使用量が高くなればなるほど視力障害、ひいては失明の危険性が増すとした。
また米国食品医薬品局(FDA)は昨年から、バイアグラを含むED治療薬数種に関し、視神経に栄養を送る血管の血流障害が視力に著しい悪影響をおよぼす「非動脈炎性前部虚血性視神経症(略称:NAION)」との因果関係について、43の発症例をもとに真剣な調査に乗り出している。この疾患はほとんどが高血圧、糖尿病、高脂血症などを抱えた中高年に発症しており、勃起不全に悩んでED治療薬の服用を試みる者も多い。それがきっかけでNAIONを発症したと思われる例が多々認められ、無視できないとしている。
バイアグラの処方に関し、眼科領域では従来からホスホジエステラーゼの遺伝的障害を含む「網膜色素変性症」患者への投与は“禁忌”とされており、結膜炎、眼乾燥、眼痛、羞明(まぶしさ)といった症状を訴えるようになった場合も減量や投薬中止を検討と示されている。また外国市販後有害事象としては複視、一時的な視力喪失、視力低下、充血、灼熱感、眼球の腫脹/圧迫感、眼圧上昇、網膜血管障害または出血、硝子体剥離/牽引、黄斑周囲の浮腫などが挙げられている。ちなみにPLAYBOY誌の創刊者として有名なヒュー・ヘフナー氏は、「バイアグラの飲み過ぎで片方の聴力を失った」と告白。内臓ばかりか、感覚器にもさまざまな影響をおよぼす薬であることを忘れてはならないようだ。
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(TechinsightJapan編集部 Joy横手)