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【異文化妊婦レポート in U.S.A】米・妊婦の間で利用者急増。医者でも助産師でもない“出産介助人”「ドゥーラ」。

こんにちは。【イタすぎるセレブ達】ライター、アメリカ東海岸在住のブローン菜美です。現在妊娠9ヵ月、アメリカ人の夫と共に初めての妊娠生活を送っています。米国の妊娠・出産事情を「異文化ママ」の視点から少しずつレポートしていくコラム第6回は、出産介助人「ドゥーラ」についてお伝えします。

■ドゥーラって何をする人?
アメリカの大都市を中心に、近年利用する妊婦が急速に増えてきているドゥーラ(Doula)。元々ギリシャ語で「女性のケアギバー」を意味する言葉が転じて、分娩の場などで妊婦に精神的及び物理的なサポートを与える、専門的トレーニングを受けた「介助人」のことを指します。しかし助産師や看護師ではないことがほとんどで、医療行為は行いません。

それではドゥーラとは実際、何をする人なのでしょうか?病院出産でも自宅出産でも、クライアントの妊婦の陣痛にずっと付き添い、痛みを和らげるマッサージなどを施したり、パニックになる夫を励ましたり。第三者ながら「チーム」の一員として、安全な分娩まで導くのがその仕事です。もちろん病院出産では医師や看護師らが安全な分娩の進行をモニターしていますが、ドゥーラはその際に後回しにされがちな妊婦の精神ケアを担当します。忙しい看護師に代わって、常に妊婦を励ましてくれる役割を担うのです。

しかしドゥーラがしゃしゃり出て、夫や医療スタッフを「蚊帳の外」にすることは決してありません。経験豊かなドゥーラだと「線引き」をきちんとわきまえ、夫がより効果的に妻の分娩に付き添えるようサポートしてくれます。また医師や看護師達からもその役割をきちんと認められていて、分娩の場で邪魔者扱いされることもありません。それどころかドゥーラがサポートした出産では、帝王切開や薬物使用(エピデュラルなど麻酔薬)の減少、分娩時間の短縮や妊婦の満足度の上昇、夫婦の絆が深まるなどのポジティブ効果が見られることが分かっています。

私達夫婦がドゥーラを雇おうと思ったきっかけは、双方の母親が出産に付き添えないため。夫の母親はすでに病気で他界していて、私の母親は日本で私の父の介護をしているため渡米は無理。そこで、ただでなくても外国で高齢初産を迎えるにあたりナーバスになっていた私を見かね、夫が決断してくれました。また、立ち会い出産にナーバスになっている夫自身への精神面サポートのためでもあります。

アメリカの場合、自らも出産経験者である女性が全米最大のドゥーラ教育組織のDONA(Doulas of North America)などが発行する資格を得て、個人で開業しているケースがほとんど。出産に立ち会う「バース・ドゥーラ」と、産褥期の妊婦を助け育児アドバイスを行う「ポストパーテム・ドゥーラ」の2種類が存在します。私達夫婦は口コミ情報や、DONAのウェブサイトなどを元に、バース&ポストパーテムの両方を雇うことにしました。

■マッチしたドゥーラ探しが重要
分娩の場という極めてプライベートな空間に、家族以外の人間として立ち会うのですから、ドゥーラと妊婦の相性のマッチングは極めて大事です。私は自宅と出産予定病院の近くで活動をしている数人を選び出し、夫婦で「面接」して最終決定をしました。

私達が選んだドゥーラは開業して6年、120件を超える分娩立ち会い経験のある癒し系のMさんと、開業2年とまだ経験は浅いけれど大学教授の前職を辞め、キャリアチェンジした先生肌のCさんのペア・ドゥーラ。2人とも私生活ではティーンの子供達を持つママで、物腰柔らかながらきびきびとした身のこなしが素敵な女性達です。聞くと2人で1ヵ月に5~6人のクライアントを受け持っている他、両親学級のインストラクターとしても活躍し、バース&ポストパーテム両方のサービスを展開しています。

■ドゥーラの事前訪問を受ける
クライアント契約を結んだ後はドゥーラが自宅を訪れ、私達がどんなお産を希望しているのか聞き取る「Prenatal Visit(事前訪問)」が行われました。お産がどのように進行するかについてレクチャーを受け、陣痛初期の際どのように痛みを和らげてもらいたいかなどを優しく聞き取ります。私はアロマオイルを使ったマッサージなどを受けたい、バスタブに浸かって水圧で痛みを和らげたい、などと希望すると、ドゥーラ達は快くサポートを約束。また私が感じている陣痛への恐怖心について、「ポストイットにポジティブなメッセージを書いて毎日読んでみて」、「こんな本が参考になるかも」と様々なアドバイスをくれました。

こうしてドゥーラ達と事前に絆を深めることが出来た私達夫婦ですが、その後は分娩の日が来るまで、彼女達から電話やEメールで無制限のサポートを受けることも出来、精神的に助けられました。ドゥーラは身内でもないのに出産を親身になって見守ってくれる母親のような存在。彼女達から産後に受けられる育児サポートにも、大きな期待を寄せています。

日本の医学界でも近年、分娩の場における欧米のドゥーラのポジティブ効果について注目が集まっているようですが、まだまだその存在は知られていないようです。核家族化が進む中、出産経験女性が身近におらず不安に思う妊婦にとって、大きな助けになるドゥーラ制度ですが、日本にも本格的に紹介される日がいつか来るでしょうか?(つづく)
(TechinsightJapan編集部 ブローン菜美)