こんにちは。【イタすぎるセレブ達】ライター、アメリカ東海岸在住のブローン菜美です。現在妊娠9ヵ月、アメリカ人の夫と共に初めての妊娠生活を送っています。米国の妊娠・出産事情を「異文化ママ」の視点から少しずつレポートしていくコラム第5回は、アメリカの無痛分娩事情についてお伝えします。
■9割以上が無痛分娩のアメリカ
日本では限られた病院だけで、計画出産の妊婦向けに行われている無痛分娩。アメリカではどこの病院でも受けることが出来、妊婦の実に9割以上が利用しています。メリットは分娩の痛みが軽減されることで、産後の体力の回復が早い点。アメリカで経膣分娩をした場合は、保険がきく期間である平均2日でスピード退院となるため、育児に備えた体力の温存は大事です。またアメリカ人達は痛みに耐えて「産みの苦しみ」を味わうことにそれほど意義を感じず、合理的なことが背景にあるのだと思います。
主流なのは、エピデュラル(硬膜外麻酔)です。エピデュラルは妊婦の背中から細いカテーテルを入れて、麻酔薬を持続的に注入する方法です。子宮口が4cm以上開いてから導入されることが多く、導入後は歌を歌えるまでにリラックスできた、という話も聞きます。
私が産科で受けた両親学級でも、「エピデュラルを受ける予定の人は?」と講師が尋ねると、ほとんどの妊婦が手を挙げていました。講師も「今はまだやりたくない、と思っていてもその場で決めてもいいんですよ。使ったからといって、誰もアナタを弱虫扱いはしません。アナタ自身のチョイスですから。」と説明。むしろ陣痛を怖がっているとより痛く感じるもので、怖いなら無痛分娩を選んだ方がいい、と言わんばかりの話しぶりが印象的でした。ちなみに私の夫は根っからの怖がりで、「出産に立ち会う夫向けのエピデュラルはないのでしょうか?」と真面目に講師に質問しようとしていました。もちろんそんなモノがあるわけはないのですが…。
■より自然な分娩への回帰も
一方アメリカでは、大都市に住みキャリアを持つ妊婦らを中心に、都合のいい日にちを決め、一流の病院・医師を選んで計画的に出産をする「デザイナー・バース」が増加しています。ハリウッド女優などのセレブが予定帝王切開をする例が増えており、その流行をキャリアを持つ忙しい妊婦達が後押ししている格好です。
帝王切開でない計画出産の場合、多くが陣痛誘発剤を使う訳ですが、その場合妊婦が強くなっていく陣痛に耐えられずに、よりエピデュラルが多用される結果になることも多いそう。そしてその結果、陣痛がスムーズに進行せず、赤ちゃんの安全確保優先のため帝王切開になるケースも増加しているそうです。
しかしアメリカには、この無痛分娩&帝王切開の大増加で、このままでは女性が本来持つ自然分娩の能力が失われてしまう、と危惧する動きもあります。そこでミッドワイフ(助産師)やドゥーラ(出産介添人)を雇ったり、ヒプノセラピー(催眠療法)によるヒプノバースや水中出産を取り入れたりして、なるべく医療の手を借りない自然分娩・自宅分娩をチョイスする妊婦達も増えて来ています。
トークショーホストなどとして活躍するタレントのリッキー・レイクは、アメリカの病院出産で行われがちな過剰な医療行為の介入に警鐘を鳴らすドキュメンタリー映画、『The Business of Being Born(邦題:ビーイング・ボーン 驚異のアメリカ出産ビジネス)』を08年にプロデュースしました。助産婦による自宅出産と病院での出産を比較して、女性本来の「産む力」を取り戻し自然分娩をすることの大事さを説いています。それによって、出産後に母親がホルモンバランスを早く整えることが出来、ベビーとの絆もより深められる、というのが彼女のメッセージ。自然分娩を支持するアメリカの妊婦の間では「バイブル的存在」となっている映画です。興味のある方は一度ご覧になってみてはいかがでしょうか?(つづく)
(TechinsightJapan編集部 ブローン菜美)