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【異文化妊婦レポート in U.S.A】母子手帳がない米国。妊婦検診では医師を質問攻めにすべし。

こんにちは。【イタすぎるセレブ達】ライター、アメリカ東海岸在住のブローン菜美です。現在妊娠8ヵ月、アメリカ人の夫と共に初めての妊娠生活を送っています。米国の妊娠・出産事情を「異文化ママ」の視点から少しずつレポートしていくコラム第3回は、母子手帳のないアメリカで、妊娠の経過をどう記録するかについてお伝えします。

■ アメリカには母子手帳がない

日本では妊婦が地方自治体に「妊娠届け」を出した上で、誰もが交付を受けられる母子健康手帳(母子手帳)。妊娠初期から子供が小学校に入学するまでの間の母子の一貫した健康記録として、検診のたびに医師に記入を受ける大事な公的書類です。しかし何事も自己責任の国アメリカでは、妊娠を届け出る必要もなければ、母子手帳のような便利なものももらえません。ではどうやって妊娠の経過を記録したらいいのでしょうか?

一応、アメリカでもマメな妊婦さんのために、本屋などで「Pregnancy Journal」と題した自己記入形式のダイアリーを売っています。最近ではスマートフォンのアプリや、『アマゾン・キンドル』などの電子書籍端末対応のものも出ているようです。体調や検診の結果などを日記形式で記録するものが主流のようですが、あくまでも妊婦のメモ書き的なもの。母子手帳のような「オフィシャルさ」は全くありません。

そこで、どうしても日本の母子手帳で記録を残したい妊婦には、英語・日本語2カ国語で書かれた母子手帳が販売されていることを知りました。『財団法人 母子衛生研究会』から出版されているもので、日米の紀伊國屋書店や通販などで入手でき、A5ノートサイズと少々大判で価格は税込み787円です(=写真)。育児情報や市町村の相談窓口の情報などが省かれ、妊婦の記録ページの部分だけなので大変薄く、日本の母子手帳を使ったことがある妊婦さんには「こんなに薄いの!」と驚かれるようです。また、この母子手帳は英語のみならず、スペイン語、中国語やタガログ語など8カ国語に翻訳されています。海外在住の日本人の妊婦さんには、ありがたい存在になっているようです。

さて、私がこの英語版母子手帳を手に入れたのは、妊娠6ヵ月を過ぎた頃でした。そこで早速、通っている産婦人科のアメリカ人の医師に手帳の存在を知らせて、記入をお願いしてみることにしました。

■ 産婦人科の検診では、積極的に主張・質問しないとダメ

ちなみにアメリカでの産婦人科の検診は、何事も医師に妊婦自ら質問し、主張することが基本です。何も言わなければ問題がないものとされて、型通りのチェックだけで検診は終わってしまいます。そのため、有益なアドバイスをもらうためには、質問事項をメモした紙を用意するなどして、ただでさえ早口・短時間で診察を済まそうとする医師を、質問攻めにしなければなりません。また、夫やパートナーが診察室に入室することは珍しくなく、仕事を休んで新米パパ達が検診に同伴する光景が、しばしば見受けられます。

また、日本では妊娠中毒症などの予防のため、平均8~10kgまでの増加で厳しく管理されると聞く「体重増加についての指導」も、アメリカではほとんどないようです。個人の体型差が激しいためでもあるようですが、聞くところでは15kg増までは想定の範囲内として、特に管理は行わないのが一般的のようです。日本人の妊婦は一般的に「やせ型」に分類されることが多く、アメリカの産婦人科で「どんどん体重を増やすように」と指導されてとまどった、という話も良く聞きます。

■ 英語版母子手帳、果たして記入してもらえる!?

閑話休題、話を母子手帳に戻します。アメリカには存在しないこの手帳を、アメリカ人の医師が、果たして記入してくれるだろうか?不安を抱きながら、私はおずおずと「先生、これは日本では妊婦皆が経過を記録する手帳なのですが、記入していただけるものでしょうか?」と切り出しました。

すると、担当のT医師(男性)は「ああこれね、見たことがあるよ。以前も日本人の妊婦さんが持って来たような気がする。ちょっと待ってね。」といそいそと部屋を出て行きました。これは期待が出来る!と思ったのも束の間、戻って来た彼は、何やらパソコンからプリントアウトした紙を2枚手に持っています。

「えーっと、今までのあなたの診察記録をプリントアウトしましたから差し上げます。ここに必要な数値は全部書いてありますからね。」がーん。やっぱり!「手書き文化」がなく、特に医療現場ではカルテ・問診を含め徹底した電子化の進んだアメリカ。医師特有の味のある字で、母子手帳を手書き記入してくれるなんてことは、やっぱりなかったのでした。(単に面倒臭かっただけ?)

しかもよく記録を見てみると、値の個人差の大きいと言われる「腹囲」の測定はなく、「子宮底長」だけが測定されているなど、日本と違ってかなり記録がアバウトに付けられています。それでも記録は記録。診察後帰宅して、自ら母子手帳をしこしこと記入しているトホホな私なのでした。(つづく)
(TechinsightJapan編集部 ブローン菜美)