全国で唯一、二社により地下鉄が運行されている東京。ようやく、一元化に向けて動き出した。
東京地下鉄株式会社(東京メトロ)と東京都交通局(都営地下鉄)は、今年2月の「東京の地下鉄の一元化等に関する協議会」において、サービス一体化を段階的に進めることで合意したが、このほど、その具体的な内容が明らかになった。
都は地下鉄一元化を推進するため、猪瀬副知事をリーダーとした地下鉄一元化プロジェクトチームを発足。知事本局、財務局、都市整備局、交通局の職員により構成され、国及び東京メトロと協議を進めてきた。
今回発表されたのは、運賃の負担軽減と乗換の改善だ。現在、東京メトロと都営地下鉄は別の鉄道会社という扱いのため、両者路線を乗り継いで利用する場合、わずか2駅でも片道最低260円の運賃が必要となる。このため、両社が一元化すれば利用者にとっては大幅な交通費の軽減が期待できる。
東日本大震災の影響により、都営地下鉄、東京メトロとも運輸収入は大きく減少しており、経営への影響は避けられない状況にある。一元化について今回の報道発表では「今後も引き続き協議を進めていく」という記載にとどまっている。
ただし、一元化への第一歩として利用者の運賃負担の軽減を図るため、現在乗り換え駅となっていない箇所について新たな指定を行うことが明らかになった。新たに指定されるのは都営新宿線岩本町駅と東京メトロ日比谷線秋葉原駅で、平成24年度中に実施するという。
これにより、例えば九段下駅から岩本町駅経由で上野駅まで地下鉄を利用した場合に、都営新宿線と東京メトロ日比谷線を利用することになるので、従来の運賃は片道330円であったが、今後は都営地下鉄と東京メトロの乗換割引が適用されるため、70円引きの260円となる。
さらに、「運賃は最短距離ルートのものを適用する」というルールがあるため、例えば都営新宿線市ヶ谷駅から東京メトロ千代田線綾瀬駅までを利用する場合、従来は小川町駅=新御茶ノ水駅での乗換ルートしか存在しなかったため、運賃は330円になっていたが、今後岩本町駅=秋葉原駅ルートも利用でき、こちらだと運賃は290円となる。どのようなルートを利用しても最短距離ルートの運賃が適用されるため、従来通り小川町乗換のルートを利用しても、運賃が40円安くなるということだ。
そして今回の報道発表では、東京の地下鉄一元化へのプロセスとして、かねてよりメディアでも取り上げられていた「乗り換えの不便さの解消」を図ることが発表された。その第一弾として、九段下駅のホーム及びコンコース階の一部壁を撤去することが明らかになった。
九段下駅は現在、都営新宿線と東京メトロ半蔵門線が並走しているが、運営会社が別ということで両線の間は壁で仕切られており、利用者は乗り換えのために一度改札を出て階段を昇降しなければならなかった。
壁の撤去はまもなく着手し、来年度中の完成を目指すという。今後、本郷三丁目駅の連絡通路の整備や、六本木駅の改札通過サービス、さらに春日駅と後楽園駅、市ヶ谷駅における改札通過サービスの改善も来年度中に実施するという。
システムの変更やルート重複する路線の縮減など課題はあるだろうが、何より一元化により交通費の負担が軽くなったり、乗換ルートが多様化するのは利用者にとって大変有益なことだ。また、震災等発生時の帰宅困難者対策や避難誘導、運転再開にむけた連携強化なども一体的に取り組むということで、よりいっそう安心して利用できる地下鉄となることを期待したい。
(TechinsightJapan編集部 鈴木亮介)