戦場カメラマン渡部陽一氏(39)はタレントして知名度を上げた為、戦場での活動はそれほど広くは知られていない。その彼がテレビ番組でフセイン元大統領が拘束された第一報をイラクから日本に入れた時の様子を語った。
イラクの元大統領、サダム・フセインが潜伏先で拘束されたのは2003年12月14日のことだった。その歴史的瞬間を現地で知った数少ない日本人の1人が渡部陽一氏その人だったのである。9月6日に放送された「踊る!さんま御殿!!」に出演した渡部陽一氏は「自分が最も輝いた瞬間」だとその時の様子を語った。
フセイン元大統領が拘束されたという情報を知った渡部陽一氏は急いで東京のデスクに電話した。「フセイン拘束です! すぐにテロップで流してください!」。この彼の一報はフセイン拘束が日本に入った初めての情報だったと言えるだろう。ところがデスクはカメラマンからの情報に半信半疑だったのである。「そのうちにNHKが第一報を流してGOサインが出たのです」とその時の状況を渡部氏は淡々と語ったが悔しい思いもあっただろう。
しかし、現地からのテレビ中継を担当したのはほかでもない渡部陽一氏だった。つまり、日本人として一番にフセイン拘束を中継で伝えたのは渡部氏ということになる。ただ、あまりの興奮からか、極度の緊張からか、彼は耳につけたイヤホンから聞こえる「キューです! キューです!」と中継開始の合図にも反応ができなかった。呆然と立ち尽くす渡部氏だったが、スタッフの必死の呼びかけでようやく語り出すことができた。すると、今度はしゃべりがゆっくり過ぎるとディレクターが怒り出した。「もっと速く話せ!」と耳元で激怒しつづけるディレクター。その様子を渡部氏は「(自分は)尻を叩かれて叱られた」と表現した。
「はい…こちら…バグダッド。フセインが…拘束されました。ティクリートの故郷の近くで…地下室に…隠れていた…らしいです。これから…イラクが…内戦に突入するかもしれません。以上…バグダッドからでした…。」
これが、12月14日にイラクから渡部陽一氏が中継した内容だ。最後までゆっくりではあったが彼なりに急いでしゃべったという。この時の状況が『ASIANEWS イラクリポート「渡部陽一・イラク取材日誌」』でも記されており緊迫感が伝わる内容となっている。「バグダッド市内の新聞社では記者の出入りが激しくなっている」、「瞬く間にバグダッド市内に広がり市民は興奮状態にある」という情報から30分後には「市民が歓喜の銃を打ち鳴らしている」と急激に熱くなっていく市民の様子が分かる。
渡部陽一氏は「カメラマンとして歯車が音を立てて動くその瞬間に(イラクに)居たことは感動した」とその時の興奮を思い出していた。
(TechinsightJapan編集部 真紀和泉)