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「正直、想定外…」8.31凶行でライブハウス受難 今後の安全対策は

31日夜、東京・渋谷のライブハウス「チェルシーホテル」で男がガソリンをまき、6人が負傷した事件は、一歩間違えれば大量の死傷者が出てもおかしくない凶行であった。大量ガソリンに加え、包丁やマッチも所持していたという犯人の猟奇性もさることながら、凶行の舞台に選ばれたのが「ライブハウス」であったことで、音楽関係者の間に衝撃が走った。

ライブハウスは一般に、防音対策や演出効果などを考えて、地下に作られることが多く、スポーツの競技場などと比較すると閉鎖的な構造になっていることが多い。

その反面、入口は1箇所で、通常はチケットを購入し入場するため、必ずライブハウスのスタッフと対面するようになっている。知らないうちに不審者が入り込む可能性が極めて低いため、公共の空間よりもかえって安全ではという見方もある。

今回の事件は他のライブハウスにどのような影響を与えているのか。TechinsightJapanが渋谷駅周辺の主要ライブハウスに聞き取りを行った所によると、今回の事故を受けての公演中止などの対応を行った所はなく、どのライブハウスも予定通り営業を行っている。

撮影:鈴木亮介・1日

ただし、現場スタッフの間にはやはり動揺が広がっているようだ。とある老舗ライブハウスの店長によると、今回のような事件は前例がなく、「率直に言って想定しておらず、ただただ驚いている」という。

平素の安全対策については、飲食物の持ち込みを一切禁止しているということで、例えば瓶やペットボトルなどを所持していないかなどの簡単なチェックは行うものの、カバンの中をチェックしたり、身分証明書の提示を求めたりといったことは行っていないという。前出の店長は「今後ブッキングマネージャーらとともに対応策を出し合って、お客様の安全対策について検討していきたい」と話している。

「ライブハウスに悪いイメージがつかないことを願いたい」と力強く話す店長。ただでさえ今年は震災の影響で公演中止、自粛が相次ぎ、経営が立ち行かなくなるライブハウスも出てきている。

凶行から一夜明け、何事もなかったかのように静まり返る現場(撮影:鈴木亮介・1日)

奇しくも犯行が起きた同時刻には、44人が死亡した歌舞伎町ビル火災から10年を目前に、東京消防庁や新宿署による歌舞伎町全ビルの一斉立ち入り検査が行われていた。不景気で客入りも減る中、安全対策という課題も、各店舗に重くのしかかっている。
(TechinsightJapan編集部 鈴木亮介)