writer : techinsight

“自称”まかり通る資格取得スクール業界。日本初、ISO認証取得で一石を投じるか。

塾や予備校、資格取得スクール、通信講座選び。これは曲者である。合格率や就職実績、学習期間、学費などを比較してどこが本当に良い学びの場なのか我々は頭を悩ませる。ところが、実はこれらの数字に統一基準はなく、各スクールが自社に都合の良い部分のみを掲載することが可能なのだ。そんな現状に一石を投じるのが、国際評価基準のISOだ。このほど、資格取得スクール、生涯学習機関では初めてヒューマンアカデミー株式会社がISO29990認証を取得した。

高校、大学などの公的教育においては、監督官庁が定めた基準や指導のもとで、一定の水準が保たれている。一方、塾や予備校、資格取得のためのスクール、通信講座などについては、提供サービス内容や業態が多種多様であり、サービスのクオリティや組織運営、財務管理の基準が標準化されていなかったのが現状だ。

2000年代後半には大手英会話スクールが相次いで破綻。また、中小企業緊急雇用安定助成金をめぐる不正受給の発覚など、一部の事業者により業界全体の信頼感を損なう事態も起こり、顧客が安心して選択できる指標の確立が急務となっていた。

そこで注目されたのが、国際的な評価基準となるISOだ。改めて確認すると、ISOとは「International Organization for Standardization(国際標準化機構)」の略で、スイス・ジュネーブに本部を持つ非営利団体だ。ISOが作成している規格は、製品に対する仕様を定めた製品規格や試験方法を定めた試験規格、マネジメントシステム規格など合わせて1万5千以上にのぼる。各国から代表的な標準化団体1団体が参加を認められており、日本は経済産業省の産業技術環境局が窓口となり、「日本工業標準調査会(=JISC)」が参加している。

このISOに2010年9月に、教育業界対象としては初となる「非公式な教育・訓練のための学習サービスを提供する事業者向けの国際規格となるISO29990」が発行された。この規格は、資格取得スクールや生涯学習機関、職業訓練事業など非公式な教育・学習サービスの提供者に対して「高いレベルでの専門的サービス」を重要視しており、「学習サービスの標準化(利害関係者のニーズ分析、サービスの設計、価格)」と「学習サービスマネジメント(事業継続としての財務システム、リスクマネジメント、人的資源、内部監査など)」の項目に大別される。

このほど、国内で資格取得スクール、生涯学習機関として初めてヒューマンアカデミー株式会社がISO29990認証を取得した。

全国に31の拠点を持ち、開講以来25万人以上の修了生を社会に輩出してきた社会人教育の「ヒューマンアカデミー」や、「総合学園ヒューマンアカデミー」、「ヒューマン国際大学機構」などを経営し、幅広い年代を対象とする生涯継続教育を全国で展開しているヒューマンアカデミー株式会社では、国際規格であるISO29990が誕生するとすぐにその調査・研究を開始。顧客のスクール選択の信頼できる基準として、また教育業界の信頼回復につながるとして、ISO獲得を重視した。

2011年1月には認証取得に向けた社内プロジェクトチームを発足。3月の東日本大震災による混乱はあったものの、同時に社内の危機管理体制及び非常時のサービス提供や運営、対応のあり方などを見直し、さらなる社内調査・研究を実施。その結果、今年7月にISO29990の認証を取得することができた。

ISO29990認証取得を受けてヒューマンアカデミー株式会社では、利用者へのアンケートの実施による希望の把握、改善や、全校舎と本部を対象とした内部監査の実施、講師の力量評価などにより、今後もさらなるサービスの向上を図るべく全講師・職員が一丸となって取り組みたいとしている。

一般に、ISO認証取得による企業側のメリットは、金融機関からの融資の際の優遇や、入札参加条件の確保、社員教育によるレベルアップ、モラルアップが期待できることなどが挙げられる。

さらに、今月末には日本国内でISOの信頼性向上を目指す独自対策がスタートし、虚偽の説明が発覚した際には認証の取り消しおよび最低1年間の再認証不可といったペナルティも課される。ますますISOの価値が高まりそうだ。

「CMや新聞広告をたくさん流しているから安心していたのに、ある日突然教室が閉鎖され、チケット制の受講料も返ってこない…」そんな心配ももう過去の話だ。ISOのような厳しい国際評価基準を取得できる企業であるかどうかが、失敗しないスクール選びのための大きな基準になるだろう。
(TechinsightJapan編集部 鈴木亮介)