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凸版印刷 立体的な文化財を高精細カラー画像としてデジタル化できる大型オルソスキャナーを開発

経年劣化による補修を繰り返す必要がある文化財を、その最上の姿でデジタルアーカイブすることは、文化事業の発展のため重要な任務となってきている。しかし、立体的な造形のものを質感や大きさを含めてデジタル化することは難しい。
そこで、凸版印刷は、立体的な文化財を、それらの精確な形や大きさを知ることが可能な高精細カラー画像としてデジタル化できる大型オルソスキャナーを開発した。

オルソスキャナーとは、特殊なレンズ(テレセントリックレンズ)を用いることで正射投影を実現。

被写体と光学系の距離が変化しても像の大きさは変化せず、得られた画像からは文化財の精確な形や大きさを知ることができる。

今回開発された大型オルソスキャナーは、従来型のスキャナーやデジタルカメラでは困難だった歪みのない正射投影画像を色彩データと同時に取得することを可能にしたものである。

これにより、文化財のデジタルアーカイブ品質が向上し、作業負荷を軽減できる。
さらに、本スキャナーは、幅120cm、奥行150cm、厚み15cmまでの大型の対象物の計測が可能である。

博物館においては、文化財の最上の保管状態を保つためには、たやすく一般公開することができない場合がある。

そうした場合、デジタルアーカイブされた画像資料を映写システムを備えた設備内で公開することで、多くの人に鑑賞してもらうことができる。

また、文化財映像に検索性を付与したオンライン博物館のようなコンテンツ事業への可能性も開くものと言えよう。

凸版印刷では、本スキャナーを使用し、京都国立博物館の協力のもと、同館所蔵の重要文化財である青銅鏡「東之宮古墳出土鏡」(11枚)を計測、デジタルアーカイブ化を行った。

デジタルアーカイブ化した青銅鏡の高精細画像は、VR作品「青銅鏡」としてコンテンツ化され、コニカミノルタプラザ ギャラリーA(東京都・新宿)で2011年7月1日から開催される『京都国立博物館の試み「美の計測」~デジタルが生む新たな視座~』展(主催:京都国立博物館)で初公開される。
(TechinsightJapan編集部 真田裕一)