NTTとNTT レゾナントは、究極のシンプルコミュニケーション「暗黙知通信」の実証実験を「暗黙知通信トライアルポータル」上にて開始する。
用語は難解であるが、メールに絵文字をちりばめたり、気遣いの言葉を入れたりするといったことで補完している「気持ち」を最終的にはボタン一つで通じ合えるようにしようとするものだ。
ネット普及前のコミュニケーションは、電話で音声通話をするかリアルで会って話をするかといった選択肢しかなかった。
電話では声の調子や抑揚で相手の気持ちを判断するしかなく、リアルで会ったときには逆に気持ちをありのままに出さないような気遣いが要求された。
現在は、これらに加えてメールやミニブログ、SNSなどコミュニケーション手段の多様化が進み、それぞれの手段に応じたコミュニケーションマナーがある。
しかし、コミュニケーションの究極は、「ねえ」「今日は」「ちょっと」といった短い言葉で意志も気持ちも通じ合えることにある。
今回のNTTの実験は、IT上でこうした究極のシンプルな情報量で最大限の意志や気持ちを伝えようとするものだ。
本実験における「暗黙知通信」とは、コミュニケーションをとりたい特定の相手に対して、携帯電話のボタンを1プッシュすることで、相手との意思疎通を図るものである。
言葉を使わずに、意思を伝えるもので、お互いに継続的に伝えあうことによって相手との相互理解を深めることを目指すノンバーバル・コミュニケーション(非言語コミュニケーション)である。
信頼関係で結ばれた家族や友人が「おい」「あれ」といった言葉だけで「分かり合える」コミュニケーションを、モバイルを使って遠隔で実現することを目指した、まったく新しいユビキタスコミュニケーションとしての可能性を検証する。
実験システムは、サーバーに蓄積された意志通知データの分析と任意で答えるアンケートによって行われる。
携帯電話で動作する「暗黙知通信アプリ」を使って、どの時間や曜日にやりとりが多いか、どのような感情や気持ちが背景にあったかを検証する。
また、「暗黙知通信アプリ」を使って、相互に意思表示を継続することで他のアプリケーションを誘発することの検証を行う。
こうした、起きている事象をパラメーター化して数値化することで、最終的にはリアル会話における「ねえ」とか「じゃあ」といった短い言語(これに表情や声の抑揚が伴う)に匹敵するシンプルコミュニケーションを実現しようとするものだ。
実験は、2011年5月19日より2012年2月末までの実施を予定している。
暗黙知の数量化・具体化というテーマでは、かつてナレッジマネジメントシステムという形で、ビジネスにおける知の資産を共有しようとする試みが行われていたが、今回のNTTの実験は、人間関係全てに通底するコミュニケーションのIT化を図ろうとするものであり、実験成果に期待が集まるところだ。
(TechinsightJapan編集部 真田裕一)