東日本大震災では被災地のみならず日本中が大きな衝撃を受けた。そんな中で注目されているのが、ドラえもんに登場する「のび太」なのだ。
富山大学教育学部の横山泰行教授が『「のび太」という生きかた』(アスコム)を著したのは2004年のことだ。教授は漫画、アニメとして長年親しまれている『ドラえもん』を研究する「ドラえもん学」というジャンルを作ったことでも知られる。
4月26日に放送されたFMラジオ「クロノス」(TOKYO FM)では、震災後に『「のび太」という生きかた』が再び話題となっていることから横山泰行教授へインタビューを行った。
そもそも横山泰行教授はなぜ「ドラえもん」や「のび太」を研究しているのだろうか。教授はドラえもんという素晴らしい作品を1世紀後にも読み継がれる「古典作品」とするべく内容を分析研究しているのだ。
すでに世界各国で「ドラえもん」は漫画やアニメとして愛されているが、実は作者の藤子・F・不二雄氏が何編描いているのか、ひみつ道具が何点登場したかなど正確には分かっていない。そのようなことを細かく調べることも研究のひとつである。
横山教授によると現在では1345編の作品があり、その中でひみつ道具が使われる回数は1350回だそうだ。ダントツで使用回数が多いのが『タケコプター』で380回は使われているという。
のび太こと「野比のび太」は実は主人公のドラえもん以上に登場しており、唯一全作品に出てくるのは彼だけなのだ。意外なことにドラえもんが登場しない作品が7編ほどあるらしい。それほど「ドラえもん」でのび太の役割は大きいのである。
では、その「のび太」の魅力とはどのようなところにあるのか。横山教授はこうまとめる。
『辛くても、いつも前向きで明るい』、『嫌なことがあってもあまり落ち込まない。楽天的』、『じっくり、のんびりやっていくことを心に刻んでいる』ということである。
現在の日本の状況下で『心がけたい気の持ち方』にしたいような内容である。震災後に「のび太」に注目が集まっている理由がここにあるようだ。
「ドラえもん」で未来が描かれている作品があるが、のび太はマドンナ的な存在「しずかちゃん」と結婚することになる。
教授はその要因として大きいのが「しずかちゃんのお父さんは作品中でもっとも聡明な人物。そのお父さんが『のび太くんこそ娘の相手にふさわしい人物』と認める」ことだと分析した。
表面上は泣き虫で頼りないイメージがある『のび太の生き方』の本質を聡明な父親が見極めたということだろう。
(TechinsightJapan編集部 真紀和泉)