沖縄出身のロックバンド、かりゆし58のメンバーがテレビ番組『深イイ話』で高校生時代のエピソードを紹介した。その直後から関連する楽曲のYouTubeでの閲覧が増え反響を巻き起こしている。
島田紳助がメインMCの人気番組「人生が変わる1分間の深イイ話」では、2月28日に「卒業&別れの贈る言葉SP」と題して視聴者からの思い出に残るエピソードを紹介した。
その中のひとつが出演者でもあった沖縄のロックバンド、かりゆし58のメンバー前川真悟にまつわる話だったのだ。
前川真悟は沖縄の高校時代、札付きの不良だった。彼の当時の写真では体にかなりの入れ墨をいれていたことからもそのワルぶりがうかがえた。
そんな前川を気にかけてくれたのが1人の男性教師だった。前川も2001年に卒業することができ、卒業式を終えて彼が校門を出ようとすると背後から「おい! 前川!」とその教師が声をかけてきたのだ。
「おい、前川。死ぬなよ! 死なんかったら、なんとかなる! だから絶対に生きろ!」と彼に言い聞かせたのだ。
「は?」しかし前川はまだ、その言葉の意味を理解できなかったのだ。
卒業してからの前川は夜の街で遊んではケンカを繰り返す。袋叩きにされ死ぬような思いをすることもあった。
その時に遠のく意識の中で彼は教師の言葉を思い出し、初めてその真意を理解したのである。
それから彼は名古屋に出てトラックドライバーとして働き、やがて2005年にかりゆし58を結成することになるのだ。
母親への思いを歌ったデビューシングル「アンマー」が日本有線大賞新人賞を受賞したのは翌2006年。そして2009年には「さよなら」をリリースする。同曲はテレビドラマ『銭ゲバ』の主題歌にもなった。
この「さよなら」の歌詞には、あの教師の言葉から前川が受けた影響と思われる部分がある。
『僕が生きる今日は、もっと生きたかった誰かの明日かもしれない』という一節である。
今回の放送の為にその男性教師に取材したところ、彼が前川にかけた言葉にはある辛い過去がその根底にあったのだ。
彼が49歳で転任してきた時のことだ、顧問を務めていた陸上部の教え子が交通事故で亡くなったのである。以来、彼は生徒達に「親より早く死ぬな、命を大事にしろ」と言い続けてきた。
そして前川に対しては「悪さをする子は卒業しても荒れて、ケンカやバイクの暴走で命を落とすかもしれない」とその思いがより強くなったのだ。
そんな教師の過去を前川が知る由も無い。しかし彼が書いた歌詞がまるで教師の辛い過去を知るかのような内容だったのである。
卒業の日に教師が言い聞かせた言葉は、その真意をしっかりと前川に伝えていたのだ。
この番組放送後にYouTubeで公開されている「さよなら」には「深イイ話を見て来ました」、「感動して泣けてきた」、「ちゃんと聞いてなかった自分が悔しい…」などのコメントが書き込まれている。
ところで高校時代の前川が入れ墨をしていながら無事に高校を卒業できたことに紳助が疑問をいだいた。
すると前川は「生徒手帳に『パーマ、喫煙、染色』は禁止と書いているが、入れ墨は書かれていない」と主張して逃れたと話した。
これも凄い話だが、なんと翌年から禁止事項に「入れ墨」が加わったというから学校の判断も凄い。
(TechinsightJapan編集部 真紀和泉)