writer : techinsight

場所、混雑時間、使い勝手まで。巷に「トイレ検索男子」が増えたワケ。

突然だが、あなたは「急な腹痛でトイレをあせって探した」「赤ちゃんのオムツ交換をする場所が見つからなくて困った」といった経験があるだろうか。最近は「OPP(おなかピーピー)芸人」のおかげでだいぶ市民権を得てきたようにも思えるが、やはりトイレにまつわる話は「恥ずかしい」「タブー」とされがちだ。まして、男女間でトイレのことを話題にする機会は少ない。しかし、トイレでの用足しは生理現象であり、誰もが避けて通れない問題だ。また、女性の場合は化粧直しや授乳など、男性には分からない「用事」もある。最近は、そうした女性の心理を読み取り、敢えてトイレを気遣う男性が出てきているようだ。

「デートコースを決めるとき、食事の場所だけでなく、トイレのことも事前にプランを考えますね」と語るのは、東京・港区に勤める瑛太似長身イケメンのA氏(27・会社員)。グルメサイトで飲食店を検索するのと同様に、トイレの場所も検索するのだという。彼が教えてくれたのは、トイレ検索サイト「REST.jp」(http://rest.jp/)だ。

A氏によると、デートプランを立てる際、行程の中で通る幾つかの主要駅について、「REST.jp」でトイレを検索し、候補を立てておくのだという。「トイレに行きたいけど彼氏に言うのは恥ずかしい」という奥手な女性の心理を突いて、男性自らその話題をしてあげることで、相手をリラックスさせるのだという。さらに、使い勝手の悪いトイレを避けるといった細かな気配りが、女性のハートを打ち抜くとか、打ち抜かないとか。

トイレなんて行きたくなった時にその駅や施設のトイレを探して駆け込めば良いのでは?という記者の問いに対し、A氏は「鈴木サン、女心分かってないっすね」と上から目線で返す。悔しいが、その場では話を合わせておいて、帰宅後すぐにサイトをチェックしてみた。

トイレ検索サイトというと、防災マップのように場所が載っているだけだと思い込んでいた。しかし、記者の予想をはるかに超える情報が「REST.jp」にはあった。まず驚いたのはサイトの入口だ。男性用と女性用に分かれているのだ。男性にとって、それも時間のかからない方の用足しならば、正直言ってどこのどんなトイレでも良い。しかし、前出のA氏によれば、女性にとっては化粧スペースや荷物かけ、流水音発生器なども重要だ。「REST.jp」にはそうしたトイレの広さから設備の詳細、さらにはナプキン販売機やハンドドライヤーの有無までが全て記されているのだ。

そして驚いたのは、ユーザーの評価やクチコミ、空き具合や最も混雑する時間帯についても書かれているので、事前に分かっていれば、評価の高いトイレに行くこともできる。

「こうした情報は男性にとっても重要」と語るのは、A氏の後輩で腸が弱いB氏(25・公務員)。B氏はなんと、通勤で利用する沿線のほとんどのトイレ情報を頭の中に網羅しており、「○○駅のトイレは汚い」「××駅は朝とても混雑する」と、訊いてもいないのに次々と教えてくれた。そんな「トイレを知り尽くした男」B氏も、「REST.jp」をケータイで時々チェックしているという。「『この駅は意外に空いてるんだな』と分かるし、知らない街に行った時も検索出来て便利ですよ」とB氏。

なるほど、最近はこうした「トイレ検索男子」が増えているようだ。それにしてもこの「REST.jp」というサイト、これほど細かい情報をどのようにして調べているのか。運営元に直接聞いてみた。

取材に応じてくださったのは、「REST.jp」の運営元である株式会社トッカシステムズの社長・浜田智美氏だ。「REST.jp」は先月20日にオープンしたばかりだが、立ち上げの経緯について浜田氏は「インターネットが普及しこれほど何でも情報が手に入る時代で、灯台下暗しと言いますか、トイレについては一切と言っていいほど情報がなかったのです。特に女性が欲しがる情報がない。そこで弊社がこの分野の情報を整備すべく、全国を網羅できるサイトを立ち上げました」と語る。

細かな情報については、一般ユーザーからの投稿を掲載しており、無料の会員登録を行うと、トイレの評価やクチコミも行える。他のユーザーによる情報訂正も可能なほか、運営元の社員による実態調査も加えており、口コミをベースに、より客観的・中立的な情報掲載に努めているという。情報はサイト開設から1か月で、既に700件以上のトイレ情報が登録されており、今後も続々と増えていく見込みだ。

こうした情報はユーザーにとって便利なばかりでなく、企業にとっても有益だ。「REST.jp」の情報は駅や公共施設に限らずテーマパークやスーパーマーケットに至るまで、民間企業のトイレについても掲載できるので、例えば自社のトイレについて、利用者の満足度や、委託する清掃業者が適正な作業を行っているかなどを知ることができる。

そして浜田氏によると、「REST.jp」は単なる検索サイトにとどまらず、公共のトイレを提供している鉄道会社やトイレへの取り組みを積極的に行う自治体などへの本音インタビューを行うなど、情報発信を積極的に行い、トイレのポータルサイトとして企業や自治体とも連携していきたいという。その第一弾として、今月1日には、鉄道会社、清掃会社などへの人材コンサルティングを手がける有限会社オンリーワン社長・西山由美氏へのインタビュー記事、そして「ちばトイレ美化おもてなし運動」についての取材記事が掲載されている。

今年8月から、千葉県は「ちばトイレ美化おもてなし運動」を行っている。魅力ある観光地を目指す上で、まずは足元のトイレからおもてなしの精神を持って美しくしていこうというこの取り組みは、今後全国の自治体や企業に広がって行くだろう。トイレを語ることは、もう恥ずかしいことじゃない。そのことを、「REST.jp」が教えてくれた気がする。あなたも「REST.jp」へ、トイレのクチコミを行ってみてはいかがだろうか。
(TechinsightJapan編集部 鈴木亮介)