writer : techinsight

【名盤クロニクル】2種類の映像で楽しむ チャイコフスキー・バレエ「白鳥の湖」

(ジャンル:クラシック)

DVDやBlu-rayディスクが普及している現在、オペラやバレエをCDで聴くよりは、映像で見た方が楽しいであろう。
どういうわけかCDもDVDも値段は大きく変わらない。そこで、今回は誰でも知っている名作バレエ「白鳥の湖」のちょっと変わった見どころを楽しめるディスクを紹介したい。

白鳥の湖の映像的な見どころは、もちろん全体的な演出や振り付けも重要だが、おおむね次のような点をポイントに置くと、面白いだろう。

○第1幕では、王子の友人たちが単独で踊る短い踊りに、実は超絶技(道化師のグラン・ピルエットなど)が披露されていることが多い。これが美しくキマるかどうかを鑑賞する。
○第2幕では、白鳥たちの群舞がどれだけ構図的に美しいかを鑑賞する。
○第3幕では、黒鳥オディール(主役オデットと同じバレリーナ)の踊る、32回のグラン・フェッテ(軸足のみでの連続回転動作)が、きちんとキマるかどうかを鑑賞する。
○第4幕では、2種類のバージョンがある。オデット姫とジークフリート王子の死による救済というオリジナルバージョンを採用するか、愛の力で悪魔に打ち勝つというバージョンを採用するかを鑑賞する。
○その他、王子と姫が見た目が良いかどうかも重要である。

まず紹介するのは、スウェーデン・ロイヤル・バレエ「白鳥の湖」(全4幕・ピーター・ライト版)である。

一般的に知られている白鳥の湖の演出とは、振り付けも曲順も異なり、エンディングは「二人の死による救済と勝利」というバージョンを取る。

まず、プリマ・バレリーナのナタリー・ノードクイストが実に若くて可憐である。

あまりに可憐で美しいあまり、第3幕で邪悪な黒鳥の役として登場しても、やはり可憐なままなので、拍子抜けするくらいである。

第1幕では、特に目新しいものは無いのだが、第2幕でオデット姫が自分の身の上話をマイムで語るシーンが長く挿入されているので、これは必見であろう。

第3幕での最大の見せ場、32回のグラン・フェッテは、残念なことに軸足がずりずりと移動してしまい、思わず心配になってしまうが、これは今後の修練に期待といったところだろう。

次に、ゲルギエフ指揮マリインスキー劇場バレエ団による映像作品を紹介する。
こちらは、一般的によく知られている演出であるが、主役の二人のほかにも脇を固める出演者の舞踊が素晴らしい。

第1幕での道化師の踊る大胆なグラン・ピルエット(軸足のみで大きく回転を繰り返す動作)も素晴らしく、王子の親友の踊りも連続ジャンプを見事にキメる。

第2幕での白鳥たちの群舞は、撮影の構図の良さも相まって息をのむほどに美しい。

オデット役のベテラン ウリヤーナ・ロパートキナの舞踊は実に安定しており、第3幕の見せ場、32回のグラン・フェッテも連続2回転を加えての神々しい舞踊を難なくこなして、圧倒的である。

難点といえば、ロパートキナが年齢的に少々厳しくなってきていることと、相方の王子役の見た目もあまりイケていないことである。

それさえ除けば、数ある白鳥の湖の舞台でも、最高レベルにある映像だと言える。

初心者に推奨するならば、ゲルギエフ指揮マリインスキー劇場バレエ団のものを、ありきたりの演出ではつまらないという方には、スウェーデン・ロイヤル・バレエのものを、推奨しておきたい。
(TechinsightJapan編集部 真田裕一)