村上春樹の人気小説が映画化されたことで話題の映画『ノルウェイの森』がいよいよ12月11日より公開される。ストーリーでは重要な位置となるヒロイン直子役の菊地凛子がラジオ番組で撮影の裏話を語った。
ベストセラーとなった小説「ノルウェイの森」が著されたのは1987年のことだ。内容はノルウェイが舞台というわけではなくストーリーの展開で奏でられる楽曲にビートルズの「ノルウェイの森」が含まれるということが題名との唯一の接点である。
ビートルズ生誕50周年という事で盛り上がる2010年に焦点をあわせてこの小説が映画化されたのはやはり、インパクトのある題名が一人歩きした感は否めないだろう。
だが、そのおかげで楽曲「ノルウェイの森」への注目度も上がり、原題「Norwegian Wood」は実際には「ノルウェイ製の家具」などを意味するもので邦題をつける時に“ノルウェイの森”とずれた解釈をしたことなどのエピソードも耳にするようになった。
12月4日に放送されたTOKYO FMの『SUNTORY SATURDAY WAITING BAR 〝AVANTI〟』に同映画でヒロインを務める菊地凛子が来店して映画について話した。
彼女のこの映画に出演するいきさつを聞くと、実に積極的で気持ちが良いほどだ。事務所で「ノルウェイの森が映画化!」と書かれたFAXを見かけた菊地はすぐにオーディション申込の電話をしたという。ところがトラン・アン・ユン監督は役のイメージと違うからと断ってきたのだ。
それでも彼女はめげずに自ら小説の一部を演じてビデオに収め、監督に送りつけた。それをきっかけに監督と会うことができてヒロインとして出演することになったのである。
そうした裏話を知ると菊地凛子の話にさらに臨場感が増すのである。トラン・アン・ユン監督は原作のイメージを損なわないことへ執念ともいえるこだわりを見せた。
例えば映画の冒頭から直子がやたらと速く歩くシーンがあり、菊地もさすがに速すぎると感じて監督に「おかしいのでは」と伝えた。しかし監督は「その速さでいいのだ」とあくまで変えなかった。
こうしたやりとりは通常は監督がフランス語で話してそれを訳して行われる。しかし菊地凛子も主張してお互いに熱くなってくるとダイレクトに英語で言い合ったという。
木の枝に雨の水滴が付く画と合わせて彼女が写るシーンでは『水滴の位置が違う』と水滴を付け直したのだ。菊地は「水滴の為に私も何度も演じることになった」とぼやいた。
彼女は「監督は私にだけ厳しかった」とも明かしたのだ。監督が他の役者には普通に接していたと感じた彼女は『フンっだ。それなら、私は私でやってみせますよ』と俄然やる気になったのだった。
菊地も実は「監督は私のこと(性格)を分かっていたみたい」と心では納得して演じていたのである。
12月11日の公開日を前に映画『ノルウェイの森』を試写会で観たという共演者は「最後に流れるジョン・レノンのボーカルが心に染み入る」と話していた。一見あまり内容とは関係がなさそうな“ノルウェイの森”だがやはり重要なキーワードになっているのだ。
(TechinsightJapan編集部 真紀和泉)