梶原善と和久井映見が夫婦役を演じているなとり「いつでも手軽に食べられるおつまみチーズ」のコマーシャル。連れ立って温泉へやって来た設定となっている。
浴衣姿で温泉街をそぞろ歩く梶原と和久井。どこといって特徴のない夫と、美しく従順な妻。多くの日本人が好感を持つ、ステレオタイプの夫婦だ。実存数はかなり少なそうではあるが、フィクションの世界ではよくある夫婦である。
かように円満そのものの夫婦であるが、妻が衝撃の一言を口にする。「私のこと放っておくと、勝手に進化しちゃいますよ」……なん、だと?
妻が進化する。その昔、娘が進化して声まで変わってナオミ・キャンベルになるコマーシャルもあったが、妻の進化とは斬新な発想だ。ただでさえ良妻賢母の鏡のような和久井演じる妻が、これ以上どう進化するというのか。
ここで台詞に注目してほしい。妻は「放っておくと」「進化しちゃいます」と言っている。この短い言葉には、夫が普段自分のことを放っておきがちなことを不満に思っていることが読み取れる。さらにその不満を「進化」をちらつかせて解消しようとしているのだ。
退化なら確かに御免こうむりたいだろうが、進化に関しては止める必要性などないのではないか。むしろ諸手を挙げて喜ぶべきことではないのか。歓迎できない進化……、ひらめいた。コイキングだ。初耳であればぜひググってほしい。
はねるしか能のないコイキング。なのに愛らしい見た目でついつい連れ歩いてしまうコイキング。意味もなくはねさせ続けた結果、衝撃の結末が待っていた。そう、ギャラドスへの進化である。
ギャラドスは強い。まったく使えなかったコイキング時代を振り返っても余りある強さである。やっと戦力になったかと安堵する反面、寂しさを覚えた。ビジュアル的にもかわいさは皆無である。あれは確かに、少なくとも私にとっては歓迎すべきではない進化だった。
コマーシャル内の夫婦はそうそういそうにないが、かわいい妻を放っておくと恐ろしい生き物に進化してしまうことは現実でも大いにありうる。妻の様子におや?と思ったら、すかさずかまって進化を止めよう。現実には連打すべきBボタンはないのだから。
(TechinsightJapan編集部 三浦ヨーコ)