(ジャンル:クラシック)
モートン・フェルドマンはアメリカ20世紀を代表する作曲家の一人であり、その音楽は微弱音の綾によって生まれる規則的なパターンを反復することで、聴く者を静止した時間の体験に誘ってくれる。
今回は、彼の晩年の代表作というより、人気作である「コプトの光」をはじめとした管弦楽作品集を紹介したい。
クラシック音楽の時代区分において、「現代音楽」と言えば、おおむね20世紀後半に書かれた作品群を指すのだが、クラシック音楽ファンにとっては、「難解」「楽しめない」「理論偏重」「人間性のない」などと、さんざんなキャプションが付けられて嫌われていた。
あまりにも大衆に嫌われるので、1980年代辺りから、「みんなに聴いてもらえる音楽」を作ろうという動きになって、古典回帰の中に現代的な要素を取り込んだ音楽や、ポップカルチャーとの邂逅による新鮮な響きを追求した音楽が主流となっていった。
フェルドマンの「コプトの光」は、そんな時期に作曲された作品である。とは言っても、時流に流されない、フェルドマン独自の世界を追求したものだ。
クラシック音楽全体に言えることだが、「聴き方のコツ」というものがあり、単に感性だけで受け止めるのではなく、ほんの少しの予備知識が必要なのだ。
記者流に、聴き方のコツを伝授させていただくならば、万華鏡を覗いて模様の綾を楽しむようなつもりで聴いてほしいと思う。
万華鏡は規則正しい模様を写すように見えて、実際には中身の動きによって、回すたびに少しずつ変化していく。
「コプトの光」も同じように、微弱な音の綾が僅かずつ変化していく様態が極めて美しい。
現代音楽には馴染みのないリスナーでも、アンビエントミュージックとして効用があるかもしれない。
そんな風に気軽に聴いて良い現代音楽である。
(収録曲)
1. ピアノとオーケストラ
2. チェロとオーケストラ
3. コプトの光
(TechinsightJapan編集部 真田裕一)