南アフリカのダーバンで行われた、スペイン-ドイツのセミ・ファイナルという注目の試合。しかし、ダーバンのキング・シャカ空港にある管制塔のコンピューターが故障し、600人以上のファンがスタジアムで観戦できないという事態が起きた。
通常、キング・シャカ空港のフライトは1日約100便、ところが試合当日の水曜日はおよそ250便だった。しかもそんな混みあう日の朝4時から8時までの4時間、飛行機の離陸と着陸をコントロールしている中央管理ユニットシステムがシステムダウン、そのため、空港に着陸する飛行機は到着順となってしまった。
こういう場合プライベートジェットが有利で、VIPの乗るプライベートジェットが予定外の場所に着陸、そのため通常の飛行機が着陸できずに到着が遅れた。また、その日は低い雲が立ち込めており、定時に着陸予定の飛行機も20分以上遅れることとなった。
こうして午後になるとダーバンの空は渋滞となり、管制塔は2時過ぎから交通規制を行い、これから離陸する予定のダーバン行き飛行機を30分間離陸させないようにした。午後5時、規制を解除したが、ここでまたVIPが一般市民の邪魔をした。規制中に待機していたVIPを運ぶプライベートジェット8機が空港に到着、パイロットが以前のダーバン国際空港へジェットを待機することを拒否、他の飛行機が着陸できる場所が再びなくなってしまった。Airports Company South Africa (ACSA)はプライベートジェットのパイロットに対しなんらかの措置をとると脅かし、プライベートジェットを違う場所へ移動させた。しかし時すでに遅し、結果として、南アフリカ航空(SAA)、クルーラ、ブリティッシュ・エアウェイズなど6便が出発した空港まで戻るか他の空港へ着陸しなければならない事態となり、600名以上のファンはスペイン-ドイツ戦に間に合わなかった。
ACSAはスタジアムで観戦できなかったファンに謝罪、今回の件が歓喜のムードから一転させたこと、さらにワールドカップ中の空路への多大な努力を汚してしまったことを反省していると述べた。
ちなみにFIFAと実行委員会はというと、責任回避。FIFAは『この問題はFIFAとは関係ない』と発表、実行委員会は『責任は当委員会にはない』と述べた。
南アフリカでW杯の開催は『Once in a lifetime(一生に一度)』と広告している。その一生に一度の試合をVIPによって潰されてしまったファンの怒りはもっともだろう。
(TechinsightJapan編集部 近藤仁美)