writer : techinsight

あなたも運転士になれます。そのお値段、なんと700万円!

何ともユニークな試みだ。千葉県を走る第3セクター路線いすみ鉄道では、一般の利用客が運転士の養成訓練を受けられる全国初の試みを開始し、応募者から選ばれた4名に、5月10日付けで内定の辞令を交付した。

いすみ鉄道は千葉・房総半島の東端から内陸部に敷設された旧国鉄木原線を引き継いだ第三セクターの路線として1988年に開業。いすみ市の大原駅から大多喜町の上総中野駅までの26.8kmを結ぶローカル線だが、開業以来の慢性的な赤字のため廃線の危機にある。

前社長の任期1年足らずでの投げ出しもあり、再建に暗雲が立ち込めていたが、昨年7月に鳥塚亮氏が新社長に就任して以来、ムーミン列車の運行や枕木スポンサーの募集など次々とユニークな再建策を打ち出している。

今回の一般利用客を対象にした運転士の養成訓練実施もその再建策のひとつで、「いすみ鉄道で少年時代の夢を叶えませんか?」というキャチコピーで応募者を広く募り、4月末に訓練参加者を内定。5月10日付けで辞令を公布した。

選ばれた4名はいずれも40代以上の男性。一度は諦めていた運転士という夢に向けて歩み始める。

訓練参加者は訓練費700万円を自己負担することが条件となっている。まずは9月に実施される国の定める学科試験をパスするために、毎週いすみ鉄道にて講義を受ける。その後、試験に受かれば、実技訓練などが実施され、最短で来年の夏に運転士デビューする予定だ。

いすみ鉄道では現在、JR東日本からの出向社員が運転士を務めており、将来的には運転士が不足するため、今回の募集を決めた。訓練参加者、いすみ鉄道双方にメリットのある試みだが、訓練費700万円の自己負担という点で、応募を躊躇した人も多いだろう。それとも、夢追う中年にとってはこのくらい安い出費だろうか。
(TechinsightJapan編集部 鈴木亮介)