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【名盤クロニクル】C・クライバー指揮 ベートーヴェン:交響曲第5番《運命》&7番

(画像提供:Amazon.co.jp)

(ジャンル:クラシック)

昭和のクラシック名曲の最高峰といえばベートーヴェンの交響曲第5番「運命」であり、平成のベートーヴェン人気曲と言えば、のだめカンタービレのテーマ曲にも使用された交響曲第7番である。
これらは古くから多くの名演が残されてきており、初めて買うのにどれを選んで良いかわからないという初心者向けに推奨したい名盤として、カルロス・クライバー指揮ウィーンフィル演奏によるこのディスクを紹介したい。

ベートーヴェン作品の演奏史を振り返れば、フルトヴェングラーに代表される指揮者の大幅な解釈や楽譜改編による演奏から一転し、カラヤンに代表される流麗でおおむね楽譜に忠実な演奏。その後歴史考証を加えた18世紀オリジナル楽器を使った古楽演奏を経て、現在はふたたび指揮者の個性が重視されるようになってきているようだ。

今回紹介するクライバーの演奏は、フルトヴェングラーほど個性的ではなく、カラヤンのような流麗さから一歩踏み込んだ、重厚感があり、バーンスタインほどアクが強くなく、古楽演奏のような学究的でない、ベートーヴェンのスタンダードと言ってもよい、素晴らしい内容だ。

もちろん、スタンダードといっても、多くの名演に接する前に脳内にセッティングする「基準」としての評価であり、どの演奏が素晴らしいかという意見は、リスナーによって異なる。

しかし、発表当初から名演の誉れ高い演奏であることに加え、「運命」の終楽章における圧倒的な勝利の凱歌や、第7番終楽章における、沸き立つようなリズムの処理など、褒め称える点は尽きない。

カルロス・クライバーは、極端にレパートリーが少なく、本当に自信のある曲しか取り上げない誠実な指揮者である。残された録音も当然少なく、このほかにもブラームスの第4番やシューベルトの「未完成」など、素晴らしい演奏がある。

ベートーヴェンの「第5番」「第7番」そして「第9番」などは、多くの演奏に接してみて、初めて「マイベスト」が判明する。そのための第一歩として、クライバー盤を推奨する次第である。
(TechinsightJapan編集部 真田裕一)