writer : techinsight

【名盤クロニクル】スタンリー・ジョーダン「パリコンサート」(DVD)

(画像提供:Amazon.co.jp)

(ジャンル:ジャズ)

ジャズファンの間では、保守的かつ求道的なミュージシャンが高く評価され、変わった楽器演奏を駆使するミュージシャンは評価が低い傾向がある。
その筋でいくなら、今回紹介するジャズギタリスト、スタンリー・ジョーダンなどは評価が厳しいだろう。なにしろ伝統的なギター奏法を根底から覆す画期的な演奏を披露するからである。そこで本連載では彼の音楽の魅力について紹介してみたいと思う。

ギターの基本的な演奏スタイルは、左手で弦を押さえて、右手でピッキングするというものだが、スタンリー・ジョーダンは両手で弦をタッピングして音を出すのである。

これはロック方面では「ライトハンド奏法」として広く知られているものをさらに拡張した演奏スタイルであり、およそ常人には真似の出来ない特殊な奏法である。

この奏法によって、ギター特有のチューニングと運指の制約から解放され、多彩なサウンドが生まれる。

今回紹介するのは、トリオ編成によるDVD映像だが、スタンリーの演奏の面白さは映像でこそ堪能できる。圧巻なのはピアノとギターの同時演奏である。

ピアノ演奏そのものは本職ではないので、決して上手ではないのだが、凄いのは右手でギター伴奏を付けながら、左手でピアノソロを披露したり、その逆に左手でピアノ伴奏を付けながら、右手でギターソロを披露するというものだ。

これを何度も繰り返すことによって、ピアノ入りカルテットに近いサウンドを生み出しているのである。

もちろん、普通のギターソロも弾けるので、演奏が進む中で、ギタートリオになったり、タッピングソロになったり、ピアノ入りカルテットになったりするさまは、まさに圧巻である。

レパートリーも幅広い。伝統的なジャズスタンダードから、ビートルズナンバー、そしてクラシック音楽のアレンジなどを次々披露するので、聴き手を飽きさせない。

同じく革新的なギタリストであるパット・メセニーが、伝統的奏法からギミックなサウンド、特殊ギターの駆使といった方向で変化を付けているのに対して、スタンリーはソリッドギターのみで特殊奏法の駆使によりマジックなサウンドを生み出している。

もちろん、伝統奏法による枯れた演奏をする奏者にも素晴らしいものがたくさんあるが、ギターの可能性を追求するイノベーターとしてスタンリー・ジョーダンはもっと評価されてもよいと思われる。

(収録曲)

1. Yesterday
2. Place in Space
3. Song for My Father
4. All Blues
5. New Morning Improv
6. Improvised Excerpt from Bela Bartok’s Concerto for Orchestra 2nd Moveme
7. Mozart’s Piano Concerto #21 2nd Movement
8. Now’s the Time
9. Naima
10. Because
11. Amazing Grace
12. Return Expedition
(TechinsightJapan編集部 真田裕一)