writer : techinsight

【親方日の丸な人々】お役所で倫理リンリと鈴虫が鳴く

前回は、公務員の焼け太り・水太りと称して、治水事業を巡る膨大な国家予算の膨張を紹介した。
今回は、同じ焼け太りでも、お役人と業者との癒着を断ち切るべく施行された法律「国家公務員倫理法」の運用に関わる、ドタバタ劇の背景でちゃっかり人員増員に成功した例を紹介する。

法の趣旨はもともと簡単なのである。「お役人は関連業者から接待や供与を受けてはならない」ことを定める法律である。
しかし、お役人と業者とはいえ、人間同士のつきあいである。どこまでが「つきあい」で、どこからが「接待」になるのか、膨大な運用方針がある。

たとえば、上のリンク先には次のような質疑応答がある。

Q 利害関係者とは、コーヒー一杯もダメなのか。
A そんなことはない。職務として出席した会議その他の会合において、利害関係者から茶菓の提供を受けることは認められているので、職務として利害関係者と会った際にコーヒー、ケーキ程度の提供を受けることは問題ない。また、自己の費用を負担すれば(割り勘であれば)、職務であるか否かにかかわらず朝・昼の飲食は自由であり、コーヒー程度であれば時間帯を問わず自由にできる。

この解釈をさらに厳密に実践すれば、次のような珍会話が展開されるであろう。

○「部長 このたびはご講演ありがとうございました。次の会議まで時間がありますから軽く腹ごしらえでも。そこに美味しい店がありますのでぜひご一緒に」」
●「いやいや、コーヒーとケーキだけなら問題ないのですが、食事はワリカンですよ。というか、一人で食べますよ」
○「今夜はどうします。実はご用意してあるんですけど」
●「いやいや、朝食昼食はワリカンにすれば問題ないんですが、夕食はワリカンでもダメなんです。」
○「でも、夕食なら勤務時間外じゃないですか」
●「勤務時間外だからこそダメなんです。もし夕食で仕事の話をすれば職務になってしまいますから、私は弁当を食べますので。おかまいなく」

お役人としては非常に立派な態度であり、このこと自体に何も批判するべき点はないが、問題は民間企業なら上司の裁量で奢ってもらったり、もらわなかったりするような話に、いちいち細目運用規程を作成して監督しなければならないということである。

当然、倫理監督に携わる人員が必要になってくるので、たいがいは専門の組織が用意されている。こういう組織はたいてい一公務員の不祥事(収賄など)を契機として、「厳密な倫理監督の必要がある」として予算要求して作られたものである。

細目は複雑すぎて覚えきれないので、職員に周知徹底するための研修や会議の開催、細目運用規程改正に伴う残業代など、何をするにも予算はついて回る。

そして、こうした倫理監督を内部機関に抱え込んでいることは無意味でもある。いろいろな意見もあるだろうが、有識者からなるオンブズマン機関を設置して、そこで監督してもらうのが一番よいのではないだろうか。
(TechinsightJapan編集部 石桁寛二)