肋骨、肩甲骨、脊髄が少年の皮膚からはっきりと見え、歩くことも出来ないほど弱っている。エイズウイルスが彼の体を確実に蝕んでいるにもかかわらず、病院やクリニックは抗HIV薬による治療管理を怠っていた。死に近づいていた少年を救ったのは、たまたま居合わせた動物保護団体の創立者だった。
去年の1月、少年は急激に体重が減り、甲状腺が腫れ、嘔吐と咳を繰り返すようになった。Leratong病院に行った少年はそこでHIV陽性であることと肺炎にかかっていることがわかった。紹介されたクリニックで6ヶ月の肺炎治療の後、体調は回復したものの、12月のクリスマスが過ぎると再び体重が減り、嘔吐を繰り返すようになった。
叔母は今年の1月から2月にかけて4回もクリニックへ連れて行った。しかしクリニックは血液検査はおろかCD4細胞数の検査(CD4細胞数が減ることでHIV細胞が増殖し、免疫不全の状態になる)すら行わず、ただプロテイン入りのポリッジを与えて帰宅させただけだった。クリニックは昨年の1月に行った血液採取のCD4細胞数検査待ちだと主張し、2月の終わりにようやく抗HIV薬による治療が出来るクリニックを紹介するまでは、抗生物質と下剤を与えていただけだった。
幸運なことにCommunity Led Animal Welfare(世界中で最も貧しい地域の人々にペットを飼うために必要な知識を与える活動を行っている世界規模の団体)の創立者Cora Baileyがたまたまクリニックで少年を発見、食料などを提供してくれた。さらにCora Baileyは少年をアメリカフロリダ州にあるthe Sparrow Rainbow Village(HIV/AIDSケアをしている施設)に行くよう手配した。もしBaileyに会わなければ少年の免疫システムは低下し数日以内に死に至るところだったかもしれない。
the Sparrow Rainbow Villageに入って2週間、2時間おきの少量の食事で少年の食欲は少しずつ回復し嘔吐もましになっているそうだ。少年の体重は今では11,4キロになり12~18ヶ月の赤ちゃんが着るTシャツを着れるようになっている。体調を聞くと「I’m okay.」とささやき返してくれるが、起き上がろうとすると足が体を支えきれず崩れ落ちそうになっている。
少年の家族は2部屋からなる小屋に曾祖母(69)と彼女の孫4人、そして少年を含むひ孫7人で暮らしていた。曾祖母は2005年に少年の母親がなくなってから少年を育ててきたが、抗エイズ薬による治療を受けさせてもらえなかったことに疑問と怒りをあらわにしている。
この事情を知ったハウテン州保健省は少年の治療怠惰について調査を開始した。「クリニックによると、少年のカルテをもらったが前のクリニックからの引継ぎを怠り、少年家族に治療ではなくカウンセリングすることばかり勧めていた。さらに栄養士は臨床医に少年の診察内容を伝えていなかったことも発覚した。」とずさんな経営管理ばかりがあらわになった。
人間を助ける人が少年を死に至らそうとし、動物を助ける人が少年の命を救った。
(TechinsightJapan編集部 近藤仁美)