writer : techinsight

【名盤クロニクル】マーカス・ミラー「キング・イズ・ゴーン」

(画像提供:Amazon.co.jp)

(ジャンル:ジャズ)
モダンジャズの帝王と呼ばれたトランペッター、マイルス・デイビスの晩年の右腕マーカス・ミラーが1993年に放った意欲作である。
一般的には、マイルス・デイビスの追悼アルバムの1枚とされているが、おそらくマーカスには別に追悼だけのために録音したわけではなく、むしろ尊敬するベーシスト、ジャコ・パストリアスへのオマージュも含めて、これからのジャズ界を牽引していく意思表示を込めたアルバムであると考えられる。

まず、このアルバムは、マーカスのベースプレイを浴びるほど堪能したいリスナーにとって最高のアルバムと言える。4曲目「The Sun Don’t Lie」で聴かせるブルージーで都会的なフレットレスベースプレイ、続く5曲目Scoopは超人的なスラッピングが最高だ。

6曲目は、その名も夭逝の天才ベーシスト、ジャコ・パストリアスに捧げた「ミスターパストリアス」。この曲はマイルスデイビスの晩年の傑作「アマンドラ」に収録されていた曲だが、ここではマーカスのベースソロのみで演奏される。

そして、往年のジャコ・パストリアスが最も輝いていた時代のウェザー・リポートの名作「Teen Town」とマイルスに捧げた「King is Gone」も素晴らしい。

ラストナンバーは、これもマイルスへの追悼を込めて演奏されたであろう、「Round Midnight」である。ここで聴かれるブルーなムードは、誰も超えることができないとされていたマイルス・デイビスの50年代の名演に肉薄する、素晴らしいアレンジと演奏だ。

マーカスはほとんどの楽器を自分で演奏できるマルチプレイヤーであるが、特にベース以外ではバス・クラリネットという楽器を好んで演奏する。本業であるベースほどのテクニシャンではないのだが、バスクラリネットでブルージーなムードを出させたら、当代一流のプレイヤーというべきであろう。

参加メンバーは、ウェインショーター、デヴィッドサンボーン、トニーウィリアムス、ジョーサンプル、レニーホワイト、オマーハキム、そして御大マイルスデイビスの生前の演奏を加えて、超豪華なものとなっている。

(収録曲)
1. パンサー
2. スティーヴランド
3. ランペイジ
4. ザ・サン・ドント・ライ
5. スクープ
6. ミスター・パストリアス
7. ファニー(オール・シー・ニーズ・イズ・ラヴ)
8. ムーンズ
9. ティーン・タウン
10. ジュジュ
11. ザ・キング・イズ・ゴーン(フォー・マイルス・デイヴィス)
12. ラウンド・ミッドナイト
(TechinsightJapan編集部 真田裕一)