writer : techinsight

【名盤クロニクル】もうひとつのRTF フローラ・プリム「バラフライ・ドリームズ」

(画像提供:Amazon.co.jp)

(ジャンル:ジャズ)
チックコリアのリターン・トゥ・フォーエヴァー(RTF)は、ジャズ史上屈指の名盤であるが、そのRTFの最初期のサウンドを特徴付けていたのが、フローラ・プリムの浮遊感のあるヴォーカルであった。
スキャットを多用しながら、楽器の一部として機能するヴォーカルスタイルは非常に斬新で、RTFの「楽園サウンド」は彼女の力によるところが大きい。そのほぼ同時期である1973年にフローラ・プリムがソロ名義で出したアルバムが「バタフライドリームズ」である。

このアルバムには、RTFの持っていた楽園サウンドに加えて、マイルス・デイビスの「オン・ザ・コーナー」に影響を受けた疾走するファンクサウンド。そしてマイルドなボサノバサウンドなど、実にバラエティに富んだ楽曲がバランスよく収められている。

RTFのデビューアルバムと有名な「スペイン」が収められた「ライト・アズ・ア・フェザー」を愛する人にとっては、まさにもうひとつのRTFと呼んでもよい内容になっている。

バックを固めるのは、ジョージ・デューク、スタンリー・クラークを中心に夫君であるパーカッションのアイアート・モレイラも加わり、練達の演奏を繰り広げている。

フローラは、ポップフィールドのトレンドをうまく取り入れながら、多くの作品を発表している。1977年の「キャリー・オン」ではレゲエやディスコ風ビートを導入したり、1980年代以降は、ジャズのスタンダードやRTFナンバーの再演を行ったりと、時代の要請に巧みに応えているしなやかさが素晴らしい。

RTFは、2008年に第2期メンバーで再結成されてライブを行ったが、ぜひフローラを加えた初期RTFメンバーでの再結成も実現してほしいものである。

(収録曲)
1. ドクター・ジャイヴ(パート1)
2. バタフライ・ドリームス
3. ヂンヂ
4. サマー・ナイト
5. ラヴ・リボーン
6. ムーン・ドリームス
7. ドクター・ジャイヴ(パート2)
8. ライト・アズ・ア・フェザー
(TechinsightJapan編集部 真田裕一)