writer : techinsight

【名盤クロニクル】怪人?でも普通の人ローランド・カーク「ドミノ」

(画像提供:Amazon.co.jp)

(ジャンル:ジャズ)
ジャズの世界では、ひとつの楽器に専念して修行にいそしむ姿が高級とされる。いろいろな楽器を持ち替えて演奏する人は一種の変人と見なされることが多い。
今回、紹介するローランド・カークは、一度に複数のサックスを加えて吹いたり、鼻でフルートを吹いたり、手回しサイレンやホイッスルを鳴らしたりする人で、しかも盲目なのでいかついサングラスをかけたその演奏姿は怪人そのものである。しかし、音楽は怪人ではなく、実に自由で形にとらわれないジャズの本流を歩むプレイヤーであった。

今回紹介するアルバム「ドミノ」は、カーク初期の名盤であり、アルバムタイトル曲は日本でもヒットしたポピュラー曲である。フルートで演奏されるが、ソロパートは複数のサックスに持ち替えたり、ふたたびフルートに戻って歌いながら吹くヴォイス奏法を披露したりと、実に多彩な音色の変化を聴かせてくれる。

4曲目の「ラメント」などは、オーソドックスな演奏スタイルで、保守的なジャズファンだけではなく、ジャズ初心者にもオススメできる内容だ。

アルバム全体を通して、日本人好みのマイナーチューンが多く、演奏姿を見ないで聴けば、実に明快で楽しめるアルバムなのだが、やはり奇怪な演奏姿をみて、恐れおののいてしまう人が多いようだ。

カークの音楽に難解なところはひとつもない。楽器を頻繁に持ち替えたり同時に吹くのは、音色の多彩さを表現するためであると同時に、サックスアンサンブルの妙技を披露するためのものである。

カークの演奏を聴けば、ソプラノサックスからテナーサックスまでの幅広い音域を駆使した広がりのあるソロと、フルートや小物楽器による音色変化が楽しめ、ジャズ名盤として紹介されることの多い「お墨付き名盤」よりも、ストレートに楽しめることであろう。

ぜひジャズを始めて聴くという人に、積極的に聴いてほしいアーティストである。
(収録曲)
1. ドミノ
2. ミーティング・オン・ターミニズ・コーナー
3. タイム
4. ラメント
5. ストリッチ・イン・タイム
6. 3-イン-1・ウィズアウト・ジ・オイル
7. ゲット・アウト・オブ・タウン
8. ローランド
9. アイ・ビリーヴ・イン・ユー
10. E.D.
11. モンク&ミンガス
12. ドミノ(別テイク)
13. アイ・ディドント・ノウ・ホワット・タイム・イット・ウォズ
14. やさしき伴侶を
(TechinsightJapan編集部 真田裕一)