writer : techinsight

【名盤クロニクル】圧倒的な演奏力!bird「LIVE tour2000」そして2010年代

昨年の紅白歌合戦で坂本冬美が歌った「また君に恋してる」が着うたランキング上位に入ったり、”いきものがかり”の「YELL」が圧倒的に若い世代に支持されているのを見て、「これは一体どうしたことだろう?」と首をかしげている団塊ジュニア世代以上の人々がいることであろう。
なぜ、こうした歌謡曲回帰が進んでいるのか、カギをとくヒントになりそうな10年前の名盤がある。birdの「LIVE!Tour2000」である。

日本のポピュラー音楽は、洋楽との微妙な距離を取りながら変化を繰り返してきたが、その観点から見た、birdの音楽は日本人離れしたソウルフルな歌唱と、圧倒的な演奏力を繰り広げるバンドメンバーにより、洋楽一辺倒だったリスナーをも虜にした。同傾向のバンドは関西系に多く、オレンジペコー、エゴ・ラッピン、そして御大MISIAなどがいる。

高度に洗練された洋楽に親しんできたリスナーにとっては、birdの音楽の素晴らしさは十分に分かる。特にこのライブでも披露しているシングルヒット曲「マインドトラベル」のグルーブ感の凄さは尋常ではない。

しかし、bird達の音楽はあまりにも洋楽に接近しすぎたのである。その反省を踏まえて迎えた2000年代は、もっと広く日本人に受け入れられるという意味で「垢抜けない」方向にシフトして10年間が流れた。

90年代までは、新しいものがカッコよく、そしてメディアが「コレは最高!」と宣言した音楽がカッコイイものとされてきたが、ケータイ文化の普及ととともに、「自分の好きな音楽は自分の心が決める」そして「昔の曲も今の曲も関係ないよ」というのが標準になった。

あと10年後の若いリスナーがbirdのこの圧倒的にソウルフルな歌を聴いたら、きっと「日本人のやっている洋楽」だと感じるに違いない。つまりジャズやソウルと同じ扱いになる。

「全ての未来は過去にある」との金言を引き合いに出すまでもなく、歌謡曲回帰はしばらくの間、おそらく2010年代の主流になっていくであろう。その過程で発掘された昔の曲、そしてそれにインスパイアされた新曲が日本人の心に響いていくだろう。

そうしたわけで、birdのこのアルバムは、J-POPが最も洋楽(黒人音楽)に接近し、圧倒的なグルーブを繰り広げた記念碑的なライブというべきである。

(収録曲)
1. オアシス
2. SOULS
3. 空の瞳
4. 満ちてゆく唇
5. 4PM
6. GAME
7. マインドトラベル
8. 9月の想い
9. LIFE
10. 桜
(TechinsightJapan編集部 真田裕一)