writer : techinsight

【名盤クロニクル】山下和仁/J.Sバッハ作品集(無伴奏Vl&Vc)


(画像提供:Amazon.co.jp)

かつてクラシックの世界では余興程度にしか考えられていなかったギター音楽の世界は、現代作曲家の意欲的作品提供もあって大きく発展した。日本でも多くのスタープレイヤーがいるが、コマーシャリズムに踵を返して古典音楽の意欲作を発表し続けている山下和仁の偉業に及ぶ演奏者はいないであろう。

山下和仁の仕事の中でも、バッハ音楽に対する取り組みには敬服すべきものがある。「無伴奏ヴァイオリン・ソナタとパルティータ」と「無伴奏チェロ組曲」というCD4枚分の大作にして、それぞれヴァイオリン奏者とチェロ奏者が生涯をかけて取り組む偉大な作品を、ひとりでギター版に編曲して演奏録音している。

しかも、その演奏内容はそれぞれ原曲の持つ気高く深淵な世界を見事に表現しているのである。

バッハ演奏において非常に重要なことなのだが、バッハの音楽はルター派のプロテスタント信仰を機軸にした深い精神性を持つ音楽であり、中途半端な演奏をすると、ただの暗い音楽になってしまうのだ。

そこで、宗教や信条を問わず、深い祈りと敬虔な心を持って演奏する必要がある。(そうでない場合は、グレン・グールドのように解体的に演奏する必要がある。)

そうした意味において、山下和仁のこの2枚のディスクセットはこの作品を愛する人がぜひ持っているべきマストアイテムである。

このほかにも、バッハのカンタータの編曲やリュート曲のギター版など、バッハを追求したい人にとって、山下和仁は避けて通れない偉大なギタリストなのである。
(収録曲)
1. 無伴奏チェロ組曲

1. ソナタ第1番ト短調BWV1001
2. パルティータ第1番ロ短調BWV1002
3. ソナタ第2番イ短調BWV1003
ディスク:2
1. パルティータ第2番ニ短調BWV1004
2. ソナタ第3番ハ長調BWV1005
3. パルティータ第3番ホ長調BWV1006
(TechinsightJapan編集部 真田裕一)