writer : techinsight

【名盤クロニクル】吉村七重/吉松隆「すばるの七つ」

年末年始は様々な音楽に出会えるシーズンだ。11月の後半からクリスマスソングが流れ、この中には讃美歌も多く含まれていて、ゴスペルコンサートなども開催される。そしてベートーヴェンの第9を聴いて年が明けると一気に「和」モードになる。しかし、いくら風物詩とは言え、毎年正月には「春の海」というのもマンネリである。せっかくの機縁であるから、現代邦楽を聴いてみてはどうだろうか。今回紹介する吉松隆作曲の「すばるの七つ」は、現代邦楽入門として非常によいアルバムだ。

基本は、吉村七重さんの箏を中心にした演奏だが、これにヴァイオリンやクラリネットなどの西洋楽器が加わり、絶妙の優雅なアンサンブルを聴かせてくれる。

日本と西洋の邂逅は、一歩間違うと国際的なホテルの売店で売っているわけのわからない提灯やキモノのような音楽になってしまうことがあるが、吉松隆の絶妙なバランス感覚により、夢見るような美しい音楽に仕上がっている。

収録曲の中には、吉松氏の代表曲として有名なピアノ曲「プレイアデス舞曲」からの箏編曲版も収録されており、こちらも実に優雅である。

なお、このアルバムに収められた作品は、吉松氏の「静」の面を代表する作品集となっており、彼にはこのほかオーケストラのダイナミズムを活かした「動」の面があり、さらに独唱者が物語朗読と歌唱を同時にこなしていくユニークな「ナムウ氏の黙示録」「トラウマ氏の一日」などがある。

現代音楽は難しいけど、リスナーに媚びた音楽もイヤというリスナーに、吉松隆の音楽はとても心地よい。

(収録曲)
1. 夢あわせ夢たがえop.74
2. すばるの七ツop.78
3. もゆらの五ツop.41
4. なばりの三ツop.54
(TechinsightJapan編集部 真田裕一)