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【名盤クロニクル】ジョシュア・レッドマン「バック・イースト」

(画像提供:Amazon.co.jp)

若手ジャズ・テナーのホープ、ジョシュア・レッドマンの近作である。タイトルと演奏内容を見ると,思わずニヤニヤしてしまうのが年配ジャズファンであろう。このアルバムは50年代ピアノレストリオの名盤、ソニー・ロリンズ「ウェイ・アウト・ウエスト」へのリスペクト&新解釈だからである。

ジャズにおいて最も活躍する楽器であるピアノは、非常に饒舌な楽器である。リズム、メロディ、ハーモニーの3要素が全部こなせる上に,ソロをとっても盛り上がる。

そのピアノをあえて外し、リズム楽器であるドラム、低音伴奏楽器であるベースのみを伴奏として演奏するというのは、非常にエキサイティングである。

まず、ドラムは普通なら淡々とリズムをキープしていればよかったのを、あえて変化を付けたプレイを繰り出して盛り上げなければならない。「歌うドラム」でなければならないのだ。

続いて、ベースも4ビートをキープするだけではない、通常だと一休み程度にしか披露されないベースソロをカッコよくキメなければならない。そしてサックスは歌心と音色に細心の計らいが必要だ。

こうした「創造的な制約」の元に演奏されるピアノレストリオによるジャズは、前掲のソニー・ロリンズ以外に、あまり見あたらない。
レッドマンは、ロリンズの名盤へのリスペクトを忘れずに、複数のプレイヤーを使い分け、曲目ごとに変化を付けるという、痛快な演奏を繰り広げられている。

収録曲の中の「アイム・アン・オールド・カウハンド」は、ロリンズの「ウェイ・アウト・ウェスト」に収録されている名曲であるが、レッドマンは独自の解釈でロリンズとの違いを表現している。

タイトルが痛快である。ロリンズの「ウェイ・アウト・ウェスト」に対抗して「バック・イースト」である。楽しんでいただきたい。
(収録曲)
1. ザ・サリー・ウィズ・ザ・フリンジ・オン・トップ
2. イースト・オフ゛・サ゛・サン(アント゛・ウェスト・オフ゛・サ゛・ムーン)
3. ザラファ
4. インディアン・ソング
5. アイム・アン・オールド・カウハンド
6. ワゴン・ホイールズ
7. バック・イースト
8. マントラ・#5
9. インドネシア
10. インディア
11. GJ
12. クライシス * Bonus Track
13. エクストラ・ソース
(TechinsightJapan編集部 真田裕一)