writer : techinsight

【名盤クロニクル】ギター・バトルの究極「スーパーギタートリオ」

(画像提供:Amazon.co.jp)

時は1981年、ロック/ポップスフィールドでは派手なギターソロは時代遅れになって、カッコイイリズムを刻むのが主流になっており、ジャズの分野ではライトなフュージョンギターがオシャレであった。
そんな時代に、アコースティックギター3人で凄いのを通り越して呆れ果てるくらいの速弾き競争を披露したのが、アル・ディメオラ、ジョン・マクラフリン、パコ・デ・ルシアの3人によりスーパー・ギター・トリオが演奏したライブ録音が、この「フライデー・ナイト・イン・サンフランシスコ」だ。

3つの組み合わせによるギターデュオが3曲、3人で演奏している曲が2曲収められているが、圧巻は冒頭のアル・ディメオラとパコ・デ・ルシアのデュオによる「地中海の舞踏/広い河」である。

スパニッシュタッチのスリリングな曲なのだが、まるで1秒間にどれだけ音をぶち込めるかを競っているかのような早弾きの応酬が繰り広げられる。
そのあまりに速く動く指はいったいどういう構造になっているのか、腱鞘炎にならないのかなどと余計な心配をしてしまうくらいのすさまじさである。

このメンバーは、アコギを演奏していてもルーツが違う。アル・ディメオラはラテンジャズ系ギタリスト、ジョン・マクラフリンはロック系フュージョンギタリスト、そしてパコ・デ・ルシアはフラメンコ系ギタリストだ。同じ楽器を演奏していても、その微妙な個性の違いを楽しむのがこのアルバムの醍醐味だ。

もちろん音楽的にも大変素晴らしく、心が熱くなるスパニッシュ・ミュージックだ。他の曲は冗長なものも含まれているが、みな同じようにスリリングな演奏揃いだ。

同じようなテクニカル・ギタリストでありながら、時代の要請に合わせてわざとシンプルに弾いていた、ポリスのギタリスト、アンディ・サマーズは、このアルバムに関して「反吐が出る」と表していたが、これを聴いて心が熱くなるか、反吐が出るかは、人それぞれの感性を試す上でも興味深いと言えるだろう。

(収録曲)
1. 地中海の舞踏|広い河
2. 黒い森
3. フレボ
4. 幻想組曲
5. ガーディアン・エンジェル
(TechinsightJapan編集部 真田裕一)